星を超えた想いを36【オリオンの刻印】 (ページ22)

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変わらぬ優しさページ22

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「いたっ」

痛みに顔を歪めてAら軽く睨みつけたが、意地悪なその仕草とは裏腹に、優しい顔をしていた彼を見ると何も言えなくなる。

「やれ、マリク！！」

感情を剥き出しにしたユーリの声が耳を掠め、二人は一気に現実へ引き戻される。意識は、その直後に聞こえた悲痛な叫び声のした方へと持っていかれた。

「うあぁぁ…ッ!!」

「剛陣さん！」

その声は紛れもない剛陣のものであり、彼は背後から迫ったマリクによって強烈な電撃を食らっていた。頭や背中を至る所にぶつけ、フィールドに横たわった剛陣は苦しみ、痛みに悶えている。

「ひどい……」

「クソっ！アイツらついに尻尾を出してきやがったな。勝つためには手段を選ばないとかなんとか言ってやがったが……どこまでも腐ったヤツらだぜ!!」

膝に手をつき、怒り任せに勢いよく立ち上がった灰崎。電流を浴びた痛みが完全に抜けきれていないためか重心を失ったかの如く、その足は蹌めいたが、Aが体を支えたことにより倒れることは免れた。

「たぶん、圧力をかけられたんだと思う。ここで勝たなければ、ロシアとしてもオリオンとしても何の示しもつかなくなるから」

両方の事情を知ってしまっているAにとっては、何とも複雑な心境だ。何より、悶え苦しむ剛陣を見下ろしたまま絶望に打ちひしがれているマリクの姿は見ているだけでも痛ましい。

「もちろん、だからってこんなやり方でサッカーをするなんて間違ってる。私達はそのやり方を正すためにここで何としても勝たなきゃいけない」

片腕に巻くスカーフを気にするように見つめながら話すAの横顔を、灰崎は横目で盗み見ていた。悲しいような、やるせないような表情が引っかかったが、気付かないふりをして体勢を整える。

そして、笛の音が大きな音を立てて鳴り響く。ユーリの強烈なスライディングが日本のボールを蹴飛ばし、白線を越えたようだ。

「走れそう？」

「あぁ、問題ねえ」

試合が一度中断されると、灰崎は体を解し直すようにその場で屈伸を始める。

「……ねえ」

「あ？んだよ」

氷浦が審判からボールを受け取っているのを横目に、Aは灰崎に話しかけた。そして次の瞬間、彼女の口からとんでもないことが語られる。

「マリクくん達のこと、助けてあげられないかな」

「…は？」

溜息を吐くのと同時に、憂いを帯びた眼差しで何気なく彼女の口から呟かれたその言葉に、灰崎は我が耳を疑うようにAを二度見した後、凝視した。