星を超えた想いを36【オリオンの刻印】 (ページ20)

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嘆声ページ20

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灰崎の必殺シュートがゴールを貫き、日本は同点へと持ち込んだ。追い詰められたロシアはベルナルドから最後の指示がイレブンバンドに送られていた。

その内容に固唾を呑むものもいれば、顔を顰める者もいる。しかし、ユーリだけは表情を一切崩さずに、日本ゴールのその先を静かに見据えていた。

「マリク！」

ロシアボールから試合が再開。笛が鳴り響くと、ユーリは迷わずマリクへパスを繋ぐ。小柄なその体を活かして素早い動きと巧みなテクニックで相手を翻弄するマリクのプレーに、誰一人として及ばない。

「負けねえ！」

しかし、何度も突破されても諦めない者がいた。根性とサッカーに対する暑い気持ちなら誰にも負けない自信がある日本の切り札、剛陣鉄之助だ。

「気持ちだけじゃ勝てないよ？」

「まだまだ！」

マリクは口元に薄い笑みを浮かべて、野生のような獰猛さで果敢にボールを奪いにやってくる剛陣を難なくかわしていく。

「何度だって抜いてやるさ」

「今度は、抜かせねえ！」

派手に転んでも立ち上がり、土まみれになりながらも追いかけ回す剛陣のその勇猛さに、マリクは顔には出さないものの、心に焦りを感じ始めていた。

「ほんとしつこいね、君！」

もううんざりだ、と身の置き所のない退屈に辟易して胸が虚ろになるような味気ない思いでマリクは深い溜息を吐くと気のない声を出した。

「最高の褒め言葉、だぜ!!」

彼がほんの一瞬油断したその瞬間を狙っていたかのように、剛陣がついにボールをカット。しかし、爪先で蹴りあげられたボールは大きく空に放物線を描いてタッチラインを越えようとする。

「あのままじゃボールが！」

「僕が行く!!」

「アフロディさん!?」

力強く地を蹴とばし、凄まじいスピードでAの真横を横切ったアフロディはボールが白線を超えてしまう直前に足を伸ばして零れ玉をカットした。会場からは、わっ…！と驚くような歓声が沸き起こる。

「このまま引き分けで終わるつもりは無いよ！」

「すごい…あの距離から追いつくなんて」

短い嘆声を上げ、華麗且つ無駄のない動きを見せたアフロディに感心を寄せつつも、彼の堂々とした佇まいと髪を靡かせる姿に、思わず見蕩れていた。

「日本代表の誇りにかけて、この試合で勝利を掴み、一位で予選を突破するんだ！」

その掛け声に仲間達が呼応し、日本のチーム力がまあ一段と上がる。このまま勢いに乗るかと思われたその直後……アフロディの背後に怪しい影が迫る。