裏切れない ページ10
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オリオン財団の最高責任者が代わって以来、過激的な行動が増え始めていたことは真人にも否めなかった。しかしそれをすることにより先代よりも多くの人々に支援を差し伸べていたのも、また事実だ。
「明日人、そして日暮さん。お前達も自分のその目で見たものを、お前自身の心で判断して欲しい」
「父ちゃん｣
｢……｣
いたく悩まされて居たたまれない気持ちにかられ、当惑の眉を顰める息子の両肩に手を乗せた真人は、その反射で顔を上げた明日人とAを曇りのない瞳で交互に見つめたまま優しく進言した。
「明日人、君もオリオンに入らないか？｣
｢え？｣
｢ま…マリクくん？何言って＿＿｣
｢もちろんAも！｣
今まで口を噤んでいたかと思えば、途端にそんな提案を口走ったマリクに明日人は思考が追いつかず、Aは開いた口が塞がらない状態だった。
｢一緒に世界を救おうよ明日人、A！" サッカーは、世界を救える "んだ！｣
顔を見ると、言わさないじゃおかないぞといったような真剣さが現われていた。
少しでも間に合わせを言おうものなら軽蔑してやるぞといったような鋭さが見えた。
「オリオンが意味のあることだと分かったよ｣
マリクの顔色は花が咲いたように明るくなる。しかし｢でも…｣と明日人がお茶を濁すような言葉で続きがあるように言いかけると、少年の淡い期待は見事に奈落の底へ落ちていく。
｢なんのためとか、どんな意義があるのかとかそういうことはよくわからない。俺は本当のサッカーをやっている時の気持ちが、"想い"が大切なんだと思う｣
寂しそうな顔で首を静かに振るマリクに構わず、明日人は瞳を閉じた。浮かび上がってくるのは、FFで共に全国優勝を果たした仲間達の姿。
「熱くなって、何も考えられなくなって、ただ走ってぶつかって。でさ……心の底から楽しいって感じる。今生きてるって感じる。そういうとこ全部が深いところから込み上げてくるんだ」
様々な困難を乗り越えてきたからこそ今の自分達がある、明日人は手のひらいっぱいに詰め込んだ夢を収めるようにしっかり握りしめると顔を上げた。
｢明日人、帰ろう｣
隣に並び立ったAから肩に手を乗せられる。柔らかく微笑むその表情につられて、明日人もまた力強く頷いた。
(そういうサッカーが大好きなんだ)
(帰らなきゃ……明日人と一緒に、二人であの宿舎に)
(俺達は、何があっても大好きなものは裏切れない!!)
(私の居場所は＿＿ちゃんとある)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年6月14日 5時
