星を超えた想いを34【オリオンの刻印】 (ページ26)

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隔てられた壁ページ26

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ガラス越しから無表情で傍観していたベルナルドの元に、一つの足音が立ち止まった。

「さっそくやってるようですね、兄さん」

「お前か、フロイ」

「お前だなんて他人行儀な…まあ仕方の無いことですけど」

親しみを込めて呼ばれると、彼は振り返らずにガラスに反射したその少年を一瞥する。

やや地黒で一部が青く外ハネした白髪に青い目が特徴の少年はギリカナンの血を引くものでありベルナルドの弟でもあるフロイだ。

「次の試合に向けての調整は済ませたのだろうな。こんな所でのんびりしていられるほど偉くなったとは思えんが」

「もちろんです、我々パーフェクトスパークの調整は既に整っています。心配には及びませんよ」

皮肉を込めた言葉を投げられても、フロイは顔色を一切変えずに目を糸のように細ませて笑顔を振り撒いている。我ながら読めない弟の姿に、ベルナルドは、ふんと鼻で笑った。

「それにしても驚きです。まさかもう刻印を刻ませているなんて。実力行使とは兄さんらしくない」

隔てたガラスの先で聞こえる少女の叫び声に痛々しい表情を見せていたフロイはそこまで言うと、視線を足元に落とした。

「(いや…そんなことはないか。オリオンのやり方はあの時とは打って変わってしまった。目的の為なら手段を選ばない兄さんだからこそ、やりかねない)」

フロイの脳裏に浮かぶのはかつての幼き日の記憶。今は亡き、父の背中を見てきた彼にとって兄であるベルナルドのやり方は目に余るものがあった。

「打てる手は全て打つ」

そんなフロイの心を見透かしたかのように、ベルナルドはもがき苦む少女を見据えたまま口を開く。

「それが新たなるオリオンへと繋がる第一歩と言える。これから先、万が一彼女が自らの意思で私の手から離れるようなことがあったとしても、刻印がある限り、仲間への罪悪感に苛まれることだろう」

これはその見せしめだ、とガラス越しにフロイと目を合わせたベルナルドは粉雪のような睫毛を三日月のように歪めて不敵な笑みを頬にたたえた。

「愚策ですね」

トゲのあるキツイ口調でフロイが言い放てば、ベルナルドからはお前も言うようになったな、というような見下した目で一瞥される。

「そうでもしなければ " あの男 " には通用しない」

「あの男…日本代表の監督ですか」

「そうだ」

"あの男" そう言ったベルナルドの眉間に皺が深く刻まれる。彼が誰よりも慎重になり、注意深く警戒している相手をフロイは知っていた。