永遠に ページ17
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凛とした静けさが辺りに広がり、お互いの息遣いの他なにも聞こえない様子はまるで、この世界に二人きりのようだった。雲間からその姿を現した月がま下にいる少年少女を照らし始める。
｢……｣
少年はちらりと、隣で祈るように手を組んで目を伏せる少女を流し目に見つめていた。
あ、と無意識に声を上げる。彼女と同じく柔らかいのであろう髪の隙間から流れ星が見えたような気がした。その頃には、馬鹿らしいと思いながらも充の答えは自ずと決まっていて、静かに口を開く。
｢───Aと、一緒に…｣
｢私が何？｣
何の前触れもなく、ひょっこりと下から顔を覗き込むように現れたAに｢うわっ！｣と情けない声を上げて充は飛び退くような勢いで後ろに下がった。
｢な、何よ…人を不審者みたいに｣
｢あながち間違ってないですね｣
その反応が気に入らなかったのか、不満そうに片頬を膨らませるAに充は心を落ち着かせる。
｢先輩、せっかくの可愛い顔が台無しですよ？おじさんみたいな声なんてピッタリです｣
｢あ゛？｣
肯定をすれば、女の子らしからぬドスの利いた声が響く。顔を見てみれば、彼女はこれでもかというほど眉を歪めて偉そうに腰に両手を当てている。その額には怒りを現す青筋が浮き立っていた。
｢それより、何をお願いしたんですか｣
そんなことなどお構い無しに、充は目を細めると怒りに震える彼女から視線を逸らして、再び空を見上げて問いかけた。｢はぐらかした！｣というAの声は聞かなかったことにする。
｢いいから答えて｣
｢答えるも何も、お願いなんてしてないよ｣
｢は？嘘つけ！｣
｢嘘じゃないって｣
予想の斜め上を行く彼女の返事に、充は目を大きく見開くと勢いに任せて顔を振り向かせてAを凝視したまま固まった。｢意味ないし｣と苦笑して言ったその言葉はご最もだ。
｢じゃあどうして｣
｢うん……お願いってさ。叶えてもらうよりも、自分の力で叶えた方が達成感があるの｣
困ったふうに眉を落としてから後ろ手を組むと、Aは湖の中を歩いて浜辺へと上がった。
｢何より自分が成長したことを一番感じられる気がして……そう思ったら、お願い事が浮かばなくなっちゃって｣
身体をくるりと翻し、月を背にして微笑んだAに充の目は奪われる。月から送り込まれた使者が今にも攫っていきそうなほど＿＿その姿は可憐だった。
(充はお願いごとしたの？)
(俺の願いは…永遠に叶うことなんてありません)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年6月14日 5時
