星を超えた想いを32【オリオンの刻印】 (ページ50)

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憧憬ページ50

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前半終了のホイッスルが鳴り響いた。得点は二対一で日本が一点をリード。いずれもアフロディが決めた得点である。地雷原を打ち破り、尚且つ優勢ときた。選手達の心にも希望の光が灯り始める。

「地雷さえなければこっちのものだね！」

胸の底から嬉しさがこみ上げる気持ちを胸元でガッツポーズを取ることで表したタツヤが云った。

「ああ、後半はガンガン攻めてやるぜ！」

その隣で珍しく無意識に鼻歌を口ずさんでいたヒロトもまた調子よく言い放てば、選手達の気持ちは一つとなり「おおっ！」と掛け声が重なった。

「お疲れ様、一星くん！」

透き通った優しいAの声はベンチによく響く。

「はい、これ。ドリンクとタオル」

「ありがとうございます先輩」

誰よりも真っ先に光の元へ駆け寄ったA。そんな可愛らしい行動すらも愛おしく感じた光は微笑んでからタオルを首にかけ、ドリンクを左手に持つ。

観衆の目さえなければ抱きついていたことだろう。

「地雷原、攻略出来て良かったね」

水分補給を行っている光に向かってAが話しかければ、彼は口元の水を手の甲で拭ってから頷いた。

「それもこれもアフロディさんのおかげです。かくい言う俺は地雷原の正体を見破ることができませんでした。……まだまだ精進が足りませんね」

情けなく眉を落とし、暗く萎んでいく光の表情。自嘲気味に笑ったその声は酷く乾いていた。口に出さず、我慢していたのだろう。

しかしそれも彼女を前にすると、何故か呼吸をするような感覚で素直に吐き出すことができた。

「一星くんは一星くんなりにやってると思う。この調子で後半戦も頑張ってね、応援してるから」

「…！はい」

そう言って微笑んで、励ましてくれるA。きっとこの優しさに触れたくて甘えたのかもしれない。光はかつて、兄の中から憧憬として見ていた彼女を見つめたまま、首を縦にふった。

「それより先輩、さっきアツヤさんのこと物凄い顔で睨んでましたけど……何かあったんですか？」

何気なく訊ねた光の言葉に、微笑んでいたAの顔が石のように固まった。柔らかく細められていた目はいつの間にか笑っていない。

「ナンデモナイワ」

休憩の合間から、アツヤを見る度にあからさまな嫌な顔をするAを光は不思議に思っていた。挙句には、ロボットのような片言で返される始末だ。

「(何かあったんだな……)」

相変わらず嘘が下手で大根役者な彼女に

光は心の中で、そっと苦笑した。