ばあちゃん ページ45
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耳を塞ぎたくなるような鈍い爆発音が会場全体を揺るがす。無理矢理地雷原の元まで押し込まれるように誘導された氷浦は爆風に巻き込まれ、体を二転三転打ち付けると、そのまま意識を手放してしまう。
＜なんと、二人目の負傷者が出ました！＞
「ひ…っ氷浦くん…！」
再び起きた衝撃的な光景に、Aは目を開ききると息を詰まらせて口を片手で覆った。
＜恐ろしい…なんと恐ろしい試合なのでしょう！このままフィールドは戦場と化してしまうのか！？＞
隠す気もない卑劣な手を使い、なんの罪もない日本選手を次々と危険にさらすアメリカのやり方に、会場からは観客達のブーイングの嵐で蔓延っている。
試合続行は不可能と見なされ、負傷退場となり担架に運ばれた氷浦に代わって新たにフィールドに加わったのは同じ伊那国島出身の万作だ。
そして担架に乗せられた氷浦は、タオルを目の上に乗せたまま苦しそうに呻く不動の隣へ下ろされる。
「せ、析谷さん！氷浦くんが酷い怪我を！」
ピクリとも動かず呼吸も浅い氷浦の容態が心配になったのかAは不動の手当てを行っていた析谷の元へ駆け寄ると服の裾を掴んで引っ張った。
「……大丈夫、気絶しているだけだ。見たところ彼も明王と同じ打ち身や擦り傷だらけだね」
不動の時と同様、怪我の具合を観察するために腕や足の傷口を眺めていた析谷は暫くしてから首を縦に振ると、Aを安心させるように肩に手を置いた。
「だけど気を失って…！」
「大丈夫、脳に損傷もない。時期に目を覚ますさ」
そう言っておしぼりのように拗られた
タオルを手のひらに掴まされたAは
キョトンとした顔で析谷を見上げる。
「あの、析谷さんこれは？」
「二人の手当ては僕と杏奈達がやるから、Aはそれまでの間、この濡れタオルで貴利名の炭を落としてもらうよ」
いつものような爽やかな笑顔を向けられたまま頭を撫でられたAは鳩のように目を丸めると析谷を見つめたまま「は、はい」と短く返事をした。
不動の元へ戻っていく析谷を見送った
Aは氷浦の横に両膝をつくと
貰ったばかりの濡れタオルを広げる。
「二人とも、酷い怪我がなくてよかった……」
それがせめてもの救いと言えよう。
Aは情けない表情をしながら
眉を落とすと、目を閉じる氷浦の顔に
傷つけないように炭を優しく拭っていく。
(ん……ばあ、ちゃ…ん温かい……)
(だから私はおばあちゃんじゃないってば)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年5月15日 0時
