人の怒り ページ40
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「ヘブンズタイム」にフィールド上の選手はおろか、観客席にいた者や控えの者達の目にも何が起きたのかわからなかった。例えるのなら「時間が止まった」という表現が正しいのかもしれない。
しかし誰しもが呆然としているわけではない。
「ヘブンズタイム、懐かしい響きだな」
時間を手動でたぐり寄せているような不思議な感覚を同時に味わいながら背もたれに背中を預けた風丸が呟けば、豪炎寺が口を開く。
「あの技にどれだけ苦戦させられたことか」
「そうですね…だけど味方になるとこれほどまでに心強い必殺技もありませんよ」
背筋を伸ばし胸を張ったAの言葉に異論はないと言うように豪炎寺と風丸は静かに首を振ってフィールドに舞うアフロディの姿を目におさめた。
観客席が静まり返る中で金髪を靡かせ、優雅に歩く姿はまさに百合の花だ。異性と見まごうほどの美しさに夜の女性は惚れ惚れとしていることだろう。
「オリオンの者達よ、僕は君たちのことをずっと見ていたんだ」
小石を蹴飛ばす感覚でボールを爪先で軽く弾くように蹴りながら、アフロディは再び指を鳴らす。
「君たちがサッカーを汚し続けているのをね」
止められた時の中で抗うこともできずに、突如襲いかかる竜巻に吹き飛んでいくアメリカ選手。
自分を神だと思い上がっていたアフロディに大切なことを教えてくれたサッカー。それを汚い手で傷つけてきたオリオンを彼は許すことができなかった。
「君たちに負ける訳には行かないんだ。絶対に倒してみせる」
一歩、また一歩と着実にゴールへ迫る。次々と現れては行く手を阻む敵選手を指一つで弾き飛ばしながらアフロディはついに、キーパーと対峙した。
「僕の、僕らのサッカーを守るために神の鉄槌を……いや、人の怒りを受けるがいい！」
怒りに打ちひしがれて震えた髪は威嚇をする孔雀の羽根のようにゆらゆらと揺れ、広がっていく。
「ゴッドノウズインパクト」
天使の翼を生やして空中に飛び上がった
アフロディの背に後光が射す。
そしてボールに巨大なエネルギーを纏わせて解き放ったシュートはフィールドを大きくえぐりながらキーパーを襲い、ゴールへと突き刺さった。
取られたら取り返す、アフロディの得点で振り出しに戻った日本。FFI初参戦ながら華麗なる神業を見せつけた彼に盛大な拍手が送られた。
(すごい……たった一人でゴールまで持ち込んで)
(シュートを決めました！さすが神様ですね！)
(つ、つくしさん)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年5月15日 0時
