リスフラン ページ47
❀
まもなく前半戦も終わりを迎えようとしている。
一点を返した日本とスペイン白熱とした
試合が繰り広げられる中、日本ベンチの
片隅では不穏な空気が蔓延っていた。
「析谷さん、吹雪くんの足の具合は……」
「骨折はしていないけど、脹脛から足首にかけてアキレス腱を痛めている可能性があるな」
タブレットを手に取り吹雪の怪我と照らし合わせるように検索をかけては気難しそうに唸る析谷。
そんなに深刻なのだろうか…Aと吹雪は不安から顔を見合わせ合うと析谷に視線を戻す。
「ここまで腫れているとすれば足の甲の捻挫……リスフラン靭帯の損傷の可能性も否めないな」
「リスフラン…？」
聞いた事のない病名にAは首を傾げた。なんでも、強く踏み込んだだけで起こることがあるといわれている病気で痛みが強く、放置すれば歩行すらも困難になる危険な病気なのだと析谷が説明した。
「詳しいことはレントゲンを撮って病院の専門医師に見てもらわないと僕からはなんとも言えない」
さすがの僕でも医師の免許までは持ってないからね、と言ってやがる頭をかきながら苦笑する析谷。
「治るんですよね？」
話を聞くに、状況は刻一刻と迫っている。もしもこのまま足が治らないなんてことになれば、彼女は無理矢理にでも止めなかった自分を責めるだろう。
「もちろん治るさ、大袈裟に言ったけど治らない怪我というわけでもないからね」
子供らしくない皺を眉の間に刻んで顔を曇らせるAに、析谷はふっ。と表情を和らげるとそんな彼女の頭に手を乗せて数回優しく叩いた。
「とりあえず今は、これ以上怪我が悪化しないように軽い応急処置をして試合が終わるまで様子を見るのが無難な対応かな」
「よかった…」
緊張の意図が切れたのか、今まで
深刻な顔をしていたAと吹雪は
安心したように胸を撫で下ろし同時に息を吐いた。
「そうと決まればA、悪いけど救急箱を持ってきてもらえる？あと、患部を冷やしたいからアイシングの準備とコールドスプレーもよろしく」
「は、はい！」
Aは勢いよく立ち上がると急いで
析谷から頼まれた物を取りに向かう。
それと入れ替わるようにつくしも心配そうな表情で、何か手伝えることはないかと訊ねる。すると析谷は「助かるよ」そう言って笑った。
(つくしはドリンクを持ってきてあげて)
(ドリンク、ですか？)
(水分補給も今の彼には大事なものだからね)
(分かりました、直ぐに用意してきます！)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月16日 9時
