星を超えた想いを30【オリオンの刻印】 (ページ43)

今日:5 hit、昨日:8 hit、合計:127,103 hit

直線と曲線ページ43

❀

一点を追う日本代表にスペインの猛攻。

試合再開早々、日本からボールを奪い取ったクラリオはベルガモ、ルーサーと共に三人で陣を組み目にも止まらぬ超速パスを繰り出し合い、パスを繋いでいく。

「てめぇらの好きにさせねえ…！」

「無駄だ！」

灰崎がルーサーにチャージを仕掛けるも体格差からして敵うはずもなく、簡単に弾かれると踏みとどまることができずに勢いよく転倒してしまう。

「任せろ、ダイヤモンドレイは止めてみせる！」

ついに円堂と一対一にまで持ち込んだ

クラリオはダイヤモンドレイを打ち放つ。

一度止めた必殺技、何も恐れることは無い。

円堂は先程完成したばかりの

「ダイヤモンドハンド」で対抗する、が。

「円堂さん、何か妙です！」

シュートコースのわずかな変化に気がついたAが咄嗟にコートの外から円堂に向かって声をかけるも、それはボールがL字に曲がった直後の事だった。

「それはただのダイヤモンドレイではない」

「なに！？」

クラリオがそう放った直後。

真正面の守りを固めていた円堂の技は

不発に終わり、円を描くように曲がった

ダイヤモンドレイはゴールへと突き刺さった。

日本代表にとってこの一点はあまりにも重い。精神的手中である円堂守のダイヤモンドハンドがあっさりと打ち破られてたことにより、流れが再び二点をリードしたスペインへと傾いてしまう。

「あの一瞬で直線でしか打てなかったダイヤモンドレイを、曲線に変えて進化させてくるなんて……」

進化に進化で対応してきたクラリオに

Aは額にじみ出た汗を乱暴に拭うと

彼のバラハに対する覚悟と

この試合に対する熱き思いを改めて痛感した。

二点のビハインドを追う日本。

試合が再開されてからも勢いに乗った

スペインの猛攻に、防戦一方のまま

攻め上がることすらできないでいる。

「アツヤ、アレを使おう。流れを変えるにはアレしかない」

「断る。あれは禁断の技だ」

このままでは不味い。そう判断した吹雪が弟のアツヤの元へ急いで駆け寄ると提言した。だが、その意味を理解したアツヤは不満そうに顔を背ける。

「分かってくれアツヤ。僕の足は次の試合まで持ちそうにない。ここでスペイン打倒への突破口を開く」

捨て身の作戦に目を伏せて

押し黙る弟に、吹雪は説得を試みる。

最初で最後の大舞台、そして彼にしては

大掛かりなバクチに、アツヤの眉間は

思い悩むように皺を作り、寄せられていった。