被害者 ページ14
❀
次元を超えた戦いが数十分にも及び繰り広げられていた。
「両者、引き分けです！」
どこから借りたかも分からない厨房の鍋におたまを打ち付けたハオの合図で、円堂とクラリオの大食い勝負は引き分けという形で幕が下ろされる。
満足そうに膨れ上がったお腹を擦り、爪楊枝で歯の間に挟まった異物を取り出す円堂とクラリオの奥の席では魂が抜けた西蔭が机に突っ伏していた。
「に、西蔭くん大丈夫？生きてる？」
「うっ……」
「待ってて、お冷すぐに注ぐから」
さすがに心配になり、急いで水を注いだ
Aからコップを受け取った西蔭は
背中をさすられながら水を一気に飲み干した。
「気持ち悪くない？」
「あ、ああ……問題な……うっ」
「全然問題あるわね…ったく。
野坂くんも無茶させるんだから」
喉元から突き上げるように押し寄せた
不快感に、西蔭は咄嗟に掌で口を覆って耐え凌ぐ。
この大食い大会の被害者は紛れもなく
火粉を浴びた彼だろう、とAは
西蔭の背中を擦りながら苦笑した。
大食い勝負にも幕が下ろされ夕食を食べ終わった、イナズマジャパンの一同はスペインよりも一足先にレストランを後にした。
そして、彼らを乗せたバスは最終目的地であるカザニスポーツセンターと呼ばれるイナズマジャパンの宿舎へと辿り着いた。
「食ったなー」
「お腹いっぱいだ！」
バスから降りて外の空気を吸い込んだ円堂、明日人は満たされたお腹をさすりながらキャリーを引く。
彼らから遠く離れた位置にはバスに
手をついて乗り物酔いをしている西蔭と
エチケット袋を渡しているAの姿があった。
「大丈夫？西蔭くん」
「も、問題ない……」
「さっきからそればっかりね」
Aが軽い憎まれ口を叩きながら
背中を擦ると必要ないと手を払われる。
そしていつものようにギロりと睨みつけてくる西蔭だが、血行が止まったような真っ青な顔で睨まれても迫力もなんともなく、正直怖さを感じない。
「さあ、ここが激ウマ焼きそばパンの宿舎です」
「はい？」
「だから、イナズマジャパンです！」
ミニ旗を振りながら案内をするスコーリオの口から飛び出した言葉に、坂野上は首を傾げる。だが後からやってきた明日人がすかさず訂正すると納得したような声を上げた。
(どんどん離れて行ってるでゴス……)
(というより、覚える気なんてさらさらないでしょ)
(あ、A。西蔭の様子は？)
(とりあえずあとは野坂くんに任せたわ)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月16日 9時
