星を超えた想いを29【オリオンの刻印】 (ページ9)

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インプットページ9

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ロシアカザニ空港に到着したスペイン、日本、アメリカの三カ国を前に歓迎の意を込めて伝統芸能で彼らを迎えたロシア代表パーフェクトスパーク。

三国の視線はそのチームを率いるキャプテン、フロイ・ギリカナンと名乗る少年に注がれていた。

「わざわざ空港まで来てくれてありがとうな」

一歩足を踏み出して前に出た円堂が話を切り出すように御足労をしてくれたフロイに礼を言うと、彼はとんでもないと言うように首を横に振る。

「神聖なる代表チームの皆様を迎えるのは当然のこと。皆さんにお会いできて光栄です」

「こちらこそ！」

人当たりのいい笑みを頬にたたえるその姿はとてもオリオン財団の使徒とは思えないものがあった。だがそれだけでは警戒心を解く理由にはならない。

「あなたは日本の円堂キャプテンですね」

「ああ、俺のこと知ってんのか？」

海外にまで自分の名が知れ渡っていたとは思わず、円堂が自分に向かって指をさしながら問いかけるとフロイは「当然です」両目を伏せて肯定した。

「ここにいる皆さんのことは全て頭に入ってますよ」

両腕を横に大きく広げて一人一人の顔を見つめながらそう言い切ったフロイに選手達は葦(あし)の葉のようにざわめく。

「おいおい、そりゃなんでも嘘だろ」

「でもそれが本当なら大した分析力と記憶力ですよ」

ないない、と片手を横に振って否定する剛陣の後ろでAは顎に手を添えて探るような目でフロイを見据える。

「そこ！ミスター剛陣鉄之助！」

剛陣の声が聞こえていたのか、フロイは

探偵が犯人を問い詰めるときのように

人差し指を剛陣に向かって指した。

「底なしの体力を持ち、最後まで粘りを見せる日本のスーパーサブ。必殺シュートはファイアレモネードライジング」

後ろ手を組みながら小さい円を描くように歩き、辺りを彷徨くフロイは頭の中にインプットしている剛陣についての情報を包み隠さずさらけ出す。

「最新の技の情報までも！？」

「驚くとこそこなんだ…」

透明のパンチでも食らったかのように後ろに仰け反る剛陣のリアクションに眇めた目を向けつつAが呆れ顔で云う。

「戦いで大事な要素にデータがあります。どんなに高い能力を持っていても、情報戦に負けては勝利の確率は落ちる。僕はあなた方の調査を怠ってはいない」

踏み出しかけた足を止めて、そのまま体を翻したフロイの目は含み笑うように細められ、その口元には誘うような挑戦的な表情が浮かべられていた。