煽て ページ6
❀
「ほらほら二人とも
久しぶりの再会なんだから仲良くな」
その辺にしとけ、と土門が二人の間に仲裁に入ったことによりAの一之瀬への警戒が解かれた。
「助かったよ、土門」
ほっ。と胸をなでおろした一之瀬に土門は
「会って早々お前も大変だな」
と、同情するように肩に手を置いた。
「いよいよこの時が来たな」
「日本が敵ってのも複雑な気分だけどな」
肩に下げていたエナメルバッグを掛け直して気を取り直した一之瀬、土門が改まったようにイナズマジャパンを見据えながら口々に言い放つ。
「アメリカ代表になったと聞いていたが、こうやってみると様になってるじゃないか」
「豪炎寺、俺を誰だと思ってるの？」
人差し指と中指を立てた手をこめかみにあててお馴染みの仕草で挨拶をした一之瀬に、つくしが嬉々とした声を上げた。
「一之瀬くんアメリカ感あります！」
「どこが？」
「チャラいですよ一之瀬さん」
三拍子が揃うように目を輝かせて
ものを言うつくしに思わず杏奈がツッコミ
Aは真顔で毒を吐く。
「……ところで君たちはオリオンのことは聞いたかい？」
本題に入った途端一之瀬は思い詰めた様子で日本に全てを話そうと口を開いたが、豪炎寺がオリオンの野望について粗方話したことでそれもなくなった。
「安心して、アメリカにはオリオンの使徒はいない。スペインも同じだと聞いている。オリオンが日暮を狙ってるということもね」
一之瀬の視線が円堂から光の後ろにいる
Aに向けられると彼女は数回目を
瞬かせた後、後ろめたそうに数歩引き下がった。
「だけど問題は……」
「ロシアチームですね」
「ロシアには要注意だ。＿＿君は？」
察しのいい野坂に一之瀬は首傾げて名を訊ねる。 一之瀬は野坂と初対面の相手だったが、どこかで見たような顔であることに興味を示した。
「野坂悠馬です。イナズマジャパンのMFです」
「君が野坂か！日本代表を戦術面で引っ張っている天才プレーヤー」
礼儀正しく胸元に手を添えて自己紹介をした野坂。一之瀬の頭の中でようやく顔と名前が一致したのか、彼は手のひらの上で拳を叩いた。
「いえいえ、天才は一之瀬さんですよ。日本のプレーヤーでありながら、アメリカの代表に選ばれるなんて」
煽て半分、からかい半分の口調で野坂が
褒めあやせば調子に乗った一之瀬は
だらしなく頬を緩ませて後頭部に手を当てた。
(そ、そう？)
(そこ煽てにのらない)
(あ、はは)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 228人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
