冷やかし ページ49
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「見んじゃねえよ」
「ご、ごめん…！」
決まりが悪そうな顔でそう言うと、すぐに目を逸らさした灰崎。しかし髪の隙間から頬の色が俄に耳元までも燃え立ったていたのをAは見てしまい、つられるようにして顔を赤らめると俯いた。
「お二人共とてーもお似合いですよー！」
「いいから撮るなら早く撮りやがれ！」
「いいから撮るなら早く撮りなさいよ！」
茶々を入れるスコーリオにいい加減痺れを切らした灰崎とAが顔を真っ赤にして同じタイミングで叫べば、今度は感動したように手を叩かれる。
「oh.....お似合いなだけではなく息までピッタリでーす！以心伝心意思疎通、まさにテレパシーですね！ジャパニーズカップル素晴らしいでーす！」
目を三日月のようにニタニタと歪ませて叩いた手で口元を抑えながら冷やかすような口調でぺらぺらと話すスコーリオにAは空いた口が塞がらない。
「私と灰崎くんはそんなんじゃないですから！」
「そんなに照れなくてよろしいよ」
「照れてない！！」
普段は片言で話すというのに
こういう時だけ妙に流暢なのが腹立たしい。
後で覚えてろよ、と静かに拳を震わせる
二人であったが、不意に視線が絡むと
どちらからともなく気恥ずかしげに目をそらす。
「それでは撮りますよ！カザニー！」
その声に合わせてシャッターが切られる。
日本でいうところのチーズを掛け合わせものなのだろうか。Aと灰崎は撮り終わったばかりのクマゾウから頭を撫でられながらそんなことを思う。
「お二人共よく撮れてますよ！トマトみたいに顔真っ赤でーす！後で焼き回ししますね！」
「焼き回しじゃなくて焼き増しです…」
さりげなくからかってくるスコーリオにそれ以上突っ込む気力などAにはなく、最後の間違った言葉だけを訂正すると大袈裟に肩を落とした。
地面に暫く目を落として小さなため息をついていたAの視界に、ふと茶色い手が映り込む。
その手はクマゾウのものであり、顔を上げると灰崎とAに向かって風船を差し向けていた。
「風船？」
「なんのつもりだ」
「もしかして…私たちにくれるの？」
こくこくと頷いたクマゾウに、二人は
不思議そうに顔を見合わせると風船を受け取る。
それに満足したクマゾウは手を振ると
陽気なステップを踏んで
どこかへと消えていってしまった。
(可愛かったね、クマゾウ)
(日本のクマゾウに比べれば普通だったけどな)
(私には同じにしか見えなかった)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
