カザニの歴史 ページ44
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スコーリオのガイドでは詳しいカザニの歴史の意図が見えてこない。伊那国メンバーは感慨深い声を上げているが恐らくは分かっていないだろう。
「ねえ充くん、ロシアのカザニって具体的にはどんなところなの？街並みとか歴史とかそういうの」
暫くロシアに滞在し、帰国子女でもある光にAが頼みの綱でもあるようも質問をすると彼は「そう、ですね…」と少し気難しそうな顔をして答えた。
「カザニの歴史と言っても、かなりのものなので一から説明は出来ませんが、もともと＿＿＿」
カザニの歴史は古く、タタール人は南方のブルガールからカザニの南ボルガルに定着し、東方からモンゴルに侵略されて各地へ広がったのが始まりだと言われている。
そんなカザニの勝利に導いてくれた聖母マリアのイコンは、ロシア正教の中でも最も貴重な宝物であり、モスクワやサンクトペテルブルクでもカザニと名の付く聖堂がいくつかあるのだ。
「カザニファミリーセンターの結婚式場であるメルティングポットもその一つで、そこから見えるカザニ・クレムリンの景観は素晴らしいと定評があるんです」
「さすが一星くん、すごく分かりやすかった！」
カザニの歴史を詳しく説明してくれた光にAは「ほー」感慨深そうに言うと、繋いでいた手を解いて自身の指先同士を合わせて拍手を送った。
「いいや、ロシアはまだまだこんなもんじゃねえ！」
「剛陣…先輩？」
肝が据わったようなどっしりとした声を出した剛陣の声が響き、明日人は隣を見て思わず固まった。
そんな明日人の反応につられて、前に座っていた選手達も続々と後ろを振り返り見ると、そこには完全防寒という言葉がピッタリな全身を防寒具で覆った剛陣の姿がそこにあった。
「これから冷え込んでくる。こんくらい着込まねえとやべえらしいぞ」
「だ、だからってそれはいくらなんでも防寒しすぎなんじゃ…」
顔を半分まで布で覆い、声すらも篭っている剛陣にたらりと後頭部に汗を流したAが苦笑しながら大袈裟だと言い張るが、剛陣曰くロシアは濡れた洗濯物を外で干して凍らせて乾かすくらい寒いらしい。
「またまた、そんな乾かし方ないですって」
ありえないと否定するように片手を振って笑い飛ばす坂野上に、ガイドブックを開いていたつくしが「本当みたいですよ」と言ったものだから車内がザワついてしまう。
(そうそう、ちゃんと着込まないとでーす！)
(スコーリオさんまで！？)
(いつの間に着替えたのよ…)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
