感慨 ページ43
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日本代表の一行を乗せたバスは
間もなく、旧市街の中心から
クレムリンに伸びるメイン通り
『バウマン通り』にさしかかろうとしていた。
「みてみて、一星くん！」
「わぁ…綺麗な街並みですね」
カザニはガイドブックの写真以上に綺麗な街であった。旧市街は既に住宅地を増やすことができないため、郊外に郊外にどんどん住宅地が拡がっていったのが始まりだと言われている。
「あ、ねえ。もしかしてあれが」
景色が移り変わる中で着々と近づいている見上げるほどの大きな城塞にAは先程の写真で見たものを思い出し、窓から指をさした。
「はい、カザニ・クレムリンだと思います」
「だよね！」
光がそう言うとAは振り返って微笑む。
到着が楽しみで仕方ないと彼女の思いが
重ねたままの指先から光へと伝わった。
「ハーイ！だいぶ街っぽいところに来ましたよ、シマウマジャパンのみなさん！」
「だから、イナズマジャパンです」
マイクを持つのすら面倒になったのか、スコーリオは両腕を大きく広げてガイドに勤しんでいるが相変わらずイナズマジャパンの名前を覚えておらず再び明日人から鋭いツッコミが入れられた。
「この辺りが街の中心部か」
西蔭の隣に腰掛けていた野坂が窓越しに呟く。
カザニの市街地もイスラム教・ロシア正教両方の文化が混在しており歩いている様々な人を見る限りここが賑わう街の中心部であるということがわかる。
「で、このカザニってどんなところなんだ？」
西蔭の後ろの席に座っている灰崎が横から顔を覗かせてカザニの街について問いかけるとスコーリオは「あー はいはいはい」と挙動不審な態度を見せる。
「カザニってどんなとこですか？」
＜こちらカザニの情報です＞
「素晴らシーバ！」
もはやスマホなしではガイドすることができないスコーリオ。AIから厳選された様々な画像や資料に目を通しながら歓喜の声を上げた。
「読む気満々じゃねえか」
と、灰崎から幻滅と呆れが混ざったような
声が浮かぶも、彼は気にせず続ける。
「では、カザニについてご説明しますよ！カザニはモスクワから東に820キロのところにある、ロシア連邦タタールスタン共和国の首都です」
スマホを隠さずに自身の顔の前に出すと目線よりやや高めに上げて音読し始める。その様子にAは光は呆れるを通り越して感心していた。
(堂々とスマホ出してるし…ある意味尊敬するわ)
(完全に開き直ってますもんね…)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
