地雷 ページ5
❀
「お前なんか雰囲気変わった？」
「えっ。そうですか？」
土門が失礼にも指をさしながらAに問うが、指をさされた本人は人差し指で頬をかいて苦笑い。
「たしかに、見ないうちになんていうかこう……全体的に丸くなったな」
「太ったって言いたいんですか一之瀬さん」
明らかに土門の時と声のトーンが打って変わり、トドメのように鋭い目でAが一之瀬を睨むと一之瀬は肩をはねらせると土門を盾にするように身を隠す。
「ち、違う違う！！そういう意味じゃなくて！性格が丸くなったってことで……あー……でもやっぱり全然変わってなかった！かわいいよ！」
「……」
まるでその言葉が地雷だとでも言うように、Aはがらにもなく舌を鳴らす。隣から聞こえた舌打ちに光は思わず彼女を二度見した。
「先輩、何してるんですか？」
そんなことを思っているとAがおもむろにジャージの中に手を突っ込みスマホを取り出したので光は小首を傾げて訊ねる。
「木野先輩に電話」
普段よりも声のトーンをやや下げた状態のまま返答したAの顔色は光からの位置では前髪と横髪で隠れて見えなかった。
「ま、待って待って日暮！冗談、冗談だから！」
「かわいいのも冗談なんですね」
「そうそう！………あ」
Aの目がさらに細く眇られる。勢いのまま頭を縦に振り続けていた一之瀬は顔面蒼白となり次第に顔中に汗が滝のように流れ出した。
「なんか、一之瀬とAのこのやり取り見るのも久しぶりだな」
一連の経緯を見ていた円堂が腰に手を当て、やれやれと眉を下げて言うと、二人の事情を知るもの達は同意だと頷き合い、知らぬ者達は顔を見合わせる。
「随分と仲がいいんですね、あの二人」
豪炎寺の隣に並んでいた野坂がなんとかAを鎮めようとしている一之瀬と光の後ろに隠れて威嚇しているAを交互に見ながら云う。
「仲が良いと言うか……Aにとっては一之瀬そのものが黒歴史らしいんだ」
「どういう意味ですか？」
バツの悪そうな苦虫を噛み潰したような
顔つきに変わった豪炎寺は「あー…」と
言いながら野坂から視線を逸らした。
「まあ……話せば長くなるんだよ、な」
「ああ。知りたいなら本人に聞けばいいんじゃないか？話してくれるかは別としてだが」
風丸と豪炎寺にしてはお茶を濁すような
歯切れの悪い言葉に野坂は眉を顰めた。
この二人に一体なにがあったのだろうか。
明日人たちは知る由もない。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
