バスの到着 ページ37
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それから間もなくして、到着を知らせるクラクションを複数回鳴らす音が聞こえると彼らが待つターミナル前にイナズマジャパン専用バスが三十分遅れでようやく到着した。
「やっときた！」
地面に置いていた鞄を肩に掛けた明日人は嬉々とした声で待ってましたと目を輝かせている。
「長かったわね……ロシアはいつもこうなの？」
明日人とは裏腹に、深い溜息をつきながらやれやれと鞄を肩にぶら下げたAがスコーリオに問う。
「ロシーアではこれが普通でーす！さあ、かみなりジャパンの皆さん、順番にお乗りくださーい！」
空気が抜けるような音と共にバスの扉が開かれ、スコーリオは小さな赤い旗を振りながら慣れていない様子で選手たちを誘導する。
「イナズマジャパンよ、イナズマジャパン。どうしていつもそこだけ日本語なのよ……ますますインチキ臭いわね。ほんとにガイドなの？」
「も、もも…もちろんでーす！」
指摘をされると急に慌てだし
口笛を吹いて誤魔化すスコーリオを
Aは呆れた顔で眺めていた。
これだから男は、と言いだす寸前の唇をしている。
と、Aとスコーリオがバスの扉の横で並んでいる場所から少し離れた位置に灰崎と野坂は柄にもなく鞄を肩に下げたまま一点を見つめて動かなかった。
「……灰崎くん、乗らないの？」
ふと野坂が灰崎を横目に一瞥して問いかける。
「あ？そういうお前こそ」
灰崎はそんな野坂を一度も見ることなく視線を変わらず前に向けたまま質問に質問で返した。
「たまには違う子と乗ってみたくなったんだよね」
そう言った野坂に、灰崎は彼の視線の先を辿る。言わずもがなそこにはインチキ臭いガイドのスコーリオのハチャメチャな言葉に幻滅しているAの姿。
「奇遇だな。でもお前には西蔭がいるだろ。先に入ってまたせてるんじゃないか？」
はっ。と鼻で軽く笑い飛ばした灰崎は腕を組み、海賊のように片目を伏せて野坂を挑発する。
「変な誤解を招くような言い方はやめてもらおうか。西蔭だって一人になりたい時くらいあるさ」
「はっ。どうだかな」
それは心外だと灰崎の偏見に野坂は片手を灰崎に差し向けて頭を左右に振った。そんな彼の絶対的で偉そうな態度に、灰崎の顔が一瞬顰められた。
(そんなに座りたいなら西蔭を貸してあげようか？)
(お前…その冗談は笑えねえからやめろ)
(残念。一石二鳥だと思ったんだけど)
(完全にお前しか得しねえだろ、それ)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
