星を超えた想いを29【オリオンの刻印】 (ページ33)

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サインページ33

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「Aちゃんは何を見てるの？」

チームメンバーの間でサッカー強化委員について物議を醸している中先程から黙り込んだまま真剣な表情で紙とにらめっこしているAに秋が訊ねた。

「轟さんからいただいた資料です」

「なんて書いてるの？」

春奈が横から紙を覗き込もうとしたが、それはAが紙を高く上げたことにより叶わなくなる。

「詳しいことは私の口からは言えないから。でも条件は悪くないし、何より利得的だから呑むつもり」

そう言うとAは常備している胸ポケットの中からボールペンを取り出すと親指の上で一回転させてからサイン証に慣れた手つきでペンを走らせていく。

「え、もうサインするの！？」

「しちゃダメなの？」

サインを書き終わり、次に二枚目の用紙を捲りかけていたAはぴたりと動きを止めると真顔で春奈の顔を見つめて淡々とした口調で聞き返す。

「だって、みんなと離れ離れになるのに…！」

「私はここに残るわよ」

「そうじゃなくて！」

春奈の真意が分からずAは眉を顰め、難しそうに首を傾げる。二人の考え方が根本的に違うのだ。

「ほっとけよ音無、そんなやつどうせ俺らのことなんか仲間ともなんとも思ってないんだからさー」

「半田くん、そんな言い方…！」

言うだけ無駄無駄、と片手を地面につき、もう片方の手をひらひらと横に振って嫌味ったらしく言い放った半田の冷たい言葉に秋は思わず声を荒らげる。

「そうですね」

「Aちゃん！」

肯定したAに春奈が行き場のない

両手を泳がせながらそれ以上は、と

止めようとするが彼女の手がそれを阻んだ。

「優勝した後にバカみたいに騒いで、かといって今度は負けたらめそめそするなんてダサすぎます。そんな情けない人を私は仲間と思ってません」

「お前……！」

一年の癖に、と半田はドスの利いた声を出し立ち上がる。大股で近づいてきてもなお、Aは顔色一つ変えずに先輩である半田を見下すように顎を上げて両腕を組みながら睨みつけた。

「ま、待ってください半田先輩！Aちゃんには悪気はなくて…！そうでしょ？Aちゃん」

半田の前に立った春奈が慌てた様子で弁解し

同意を求めようと顔だけを振り向かせるが

Aは挑発するように半田に向かって舌を出す。

頑固なAと頭に血がのぼりやすい半田。

今に始まったことではないこの二人に

やれやれと後頭部に手を当てた豪炎寺が

仲裁に入ったのはこの数秒後だ。