星を超えた想いを29【オリオンの刻印】 (ページ28)

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メンバーを変えることなく雷門は後半へと挑む。彼らの顔色が試合前とは違い暗いのは前半戦でスペインの力を思い知らされたからに違いない。

雷門中対スペイン戦は甲乙付け難いが期待されたが、後半開始直後のクラリオの目にも止まらぬ強烈なシュートが円堂の不意をつき、彼が反応をする前にまたも六点目のゴールを奪われてしまった。

「少し、シュートが見えてきた」

転がってきたボールを拾い円堂は独り言を呟く。

クラリオがシュートを放つ直前、円堂の目がだんだんと彼のスピードに追いついてきたのか動きが一瞬だけスローモーションに見えたのだ。

「よし次……次は行ける！」

「ほう…」

円堂の諦めないその精神力

どんなことがあっても目の前の敵に

立ち向かうその心の強さにクラリオは

胸を打たれ、感心したように声を出す。

再び雷門ボールからの試合再開。得点は未だ変わらず六対０でスペインが優勢。スペインはなおも一タックルから逃げていた雷門選手の投げた不安定なパスをつかみ雷門センターサークル内へとび込んだ。

ボールを奪われた間際、スペインは

クラリオを筆頭にふたたび猛攻を開始。

前線に上がっていた豪炎寺たちは

それを警戒し、引きあげる頃には既に

クラリオのシュートが放たれていた後だった。

「止める！」

背中を見せるように上半身を右に大きくひねり、オーラを噴出。胸(心臓)に右手を当て、大きく気を溜めて振り返ると同時に右手を上げ、召喚した魔神共に右掌を突き出す。

「マジン・ザ・ハンド」

張り手でボールの威力を殺して右手で

クラリオのノーマルシュートに対応するも

威力は衰えるどころか増すばかり。

まずいと直感し、片方の手を出した頃には

円堂はゴールごと捩じ込まれていた。

「そんな、キャプテン…！」

「マジン・ザ・ハンドが抜かれるなんて」

世宇子中のアフロディのシュートをも止めた円堂大介の秘伝とも言える技がこうも簡単に破られ、壁山、土門は我が目を疑うように跪く円堂を見つめる。

「敵のストライカーはボールの回転をかけた上に、小さな竜巻でコーティングしていたんだ。円堂が触れることでボールの軌道を変えた」

顎に手を当ててクラリオがシュートを

放つ直前に見えた仕掛けに

一之瀬は気づいており、見解を述べた。

円堂のマジン・ザ・ハンドはおろか

全ての技がスペインチームの

計算のうち、ということになる。

(円堂くん…)
(木野先輩…)