星を超えた想いを29【オリオンの刻印】 (ページ26)

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勝利の女神なんてページ26

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＿＿この試合にチャンスなどない。

雷門サッカー部の監督、響木が確かにそう言った。勝つ見込みのない試合だと、大義名分のためだと。そして何より円堂たちのためでもある、と。

再び雷門ボールからのリスタート早々、一之瀬を筆頭にDFの風丸、土門がゴール前まで駆け上がる。

「ザ・フェニックス！」

三人が一点を同じ速度で通過し、巻き起こった炎がボールを舞い上げる。炎がフェニックスとなり、空中のボールを三人同時に蹴りこむ。

しかし最後に一之瀬がボールを打ち込む瞬間、突然目の前に上がっていたはずのクラリオが現れると逆方面からボールを蹴りこんでくる。

「なに！？」

体格面でも劣る一之瀬に力押しで

クラリオに勝てるはずもなく

そのまま押し込まれた一之瀬は地面に

叩き落とされ、フェニックスは不発に終わる。

「ザ・フェニックスが…！」

「やっぱり世界と日本じゃ格が違いすぎるんです」

秋には思い入れ深い必殺技であるが故に、彼女はショックを受けた反動で両手で口元を覆う。Aもまたその惨状から目を背け、呟く。

「じゃあこのまま、黙って仲間たちが負けていくのを見てることしかできないってことなのかよ！」

いても立ってもいられないと立ち上がった半田が悔しそうにスパイクで芝生を踏みしめる。皆も同じ気持ちなのか、そんな半田から目を逸らし俯いた。

「半田先輩、悔しい気持ちは分かりますけど何をどうしても勝てない時は勝てないんです」

「日暮……」

誰もが何も言えない中、その空気に似つかわしくない淡々と告げたAの声が響く。

顔を上げた者達の視線が彼女に注がれるも、Aは依然として視線を前に向けたまま動かない。

「この試合で雷門が勝つ確率はどのくらいですか」

「……０よ」

Aがそう訊ねれば、片腕を擦りながら言いにくそうに視線を足元に落とした夏未がそう断言した。

「ほら、勝利の女神なんていないんですよ」

＿＿勝利の女神は諦めないやつが好きなんだ。いつだったか、円堂がそんなことを言っていたのをAは思い出し、そしてその言葉が頭を過った。

「今日この試合は始まる前から観るまでもなく勝敗が決まっていたんです」

きっぱりとAがそう言い切ると

誰かの固唾を呑み込む音がやけに大きく聞こえた。

同時に雷門が二点目の得点を

スペインに許し、まるで相手にならないと

クラリオは肩を鳴らして去っていく。

その後ろ姿を円堂は悔しそうに見据えていた。