あの日の部室＜回想編↓＞ ページ19
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＿＿＿少年サッカー全国大会FF決勝戦。
響木正剛率いる雷門中対影山嶺二率いる世宇子中の戦いは後半戦、雷門が怒涛の快進撃を見せ神のアクアを摂取した世宇子を辛くも破り幕を下ろした。
40年間止まった歴史にも終止符が打たれた瞬間だ。
同級生や元部活の先輩達から労いの言葉を貰っている仲間達がいる中で、少し離れた場所に建てられている始まりの原点とも言える雷門サッカー部室に円堂、鬼道、豪炎寺、Aの四人が集まっていた。
「A、クラスに顔を出さないのか？みんな祝ってくれるぞ」
部室の窓の柵に手をつきながら外を眺めるAに、幼馴染みの豪炎寺が椅子に座ったまま諭す。すると彼女は顔だけを横に向けると無愛想に言ってみせた。
「囲まれるのは苦手だから嫌。どうせ帰っても宮坂いるし。アイツの顔みたら嬉しさ半減になる」
だからここにいる、とそういって再び窓に視線を戻すAにやれやれと豪炎寺は肩を竦め、目の前にいる鬼道と目が合うと互いに苦笑し合う。
「喜んでるようには見えないがな」
「これでも喜びの最上級ですよ、鬼道さん」
「そ、そうか」
感情の篭もっていない棒読みに近いAの言動に、あの鬼道ですら纏めあげたドレッドヘアーを数本寝癖のように飛ばして頬を引き攣らせている。
「なあ、もっと笑えってA！」
「は？」
そのやり取りを今まで背もたれに両手を乗せていた円堂が突然立ち上がると窓の外を眺めるAの元まで遠慮なく歩み寄った。
「ちょ…」
「ほらほら、ここをこうやって」
鼻先がくっつきそうなくらいの近さに
耐性のないAは数歩後ずさるが
資料棚に背中がぶつかりそのまま迫った
円堂の人差し指が彼女の口元にあてがわれる。
「にぃーっ」
「な、なにするんですか」
押し当てられた人差し指を上に持ち上げた円堂。無理矢理笑顔を作らされたAは片眉を痙攣させながら円堂を睨みあげた。
「何って、お前が笑わないからその手伝いだ！」
「そんなのいりませんから。あなたはほんとに出会った時から何も変わりませんね」
人差し指を片手で払い除けながら言うと、円堂はさほど気にした素振りも見せずに歯を見せて笑う。
優勝して成長しても中身は何一つ変わっていない。困ったように眉を落としたAもまた、つられるようにへの字に曲がった口元を少しだけ緩ませた。
(お、笑った！)
(笑ってません)
(いや、絶対笑ったって！なあ豪炎寺！)
(さあ、どうだろうな)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
