昔の彼女 ページ18
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「興味持たなくていいから。ていうか目を輝かせないで。なんで心做しか嬉しそうなの？」
感情の読み取りが極めて困難な灰色で塗りつぶされた瞳が熱を持ったかのようにイキイキとしておりAは片手を前に突き出したまま頬を引き攣らせる。
「僕も知らない君のことをまた知ることができるから、かな」
「よくそんな恥ずかしいセリフ言えるわよね、野坂くん」
添えていた手を離し、面と向かって真面目な顔で告げた野坂にAは数回目を瞬かせた後、横目を野坂からするりと逸らすと伏し目がちに言い返す。
中国戦前のバスの中での出来事といい、野坂の真剣な瞳を直視することができなかった。
「お気に召さない？」
「ぜーんぜん、召さないわ」
「それは残念」
「思ってもいないくせに」
どこまでが本音と建前なのか相変わらず
読めない野坂にAは不快そうに眉を寄せる。
「バレた？」
なんて肩を竦める野坂。
ほら見た事かとため息を吐く。
「灰崎も興味あるよな？」
「！」
上体を前に倒して灰崎の顔を横からのぞき込むような体勢になりながら明日人が突然同意を求めるような声をかけると、無意識にAははっとした顔で灰崎を見る。
「あ？何が」
「だから、一年前のAのこと！」
「興味ねえよ、そんなもん」
だが灰崎本人は右から左に聞き流していたらしく、会話の内容まではちゃんと把握していなかったようだ。明日人が大まかに説明をすると片耳に人差し指を突っ込んでつまらなさそうに答えた。
「えー」
つまんない、と唇を尖らせる明日人を流し目に耳から手を離すと灰崎は口を開く。
「だいたい、昔がどんな性格だろうと今のこいつはAそのものだろうが。性格が変わったところで今も昔も根本的には何一つ変わっちゃいねえよ」
「…！…あり、がとう」
分かったら変なカン探りはやめろ、と灰崎の口から気の利いた言葉が出て尚且つそれが自分のためだと少し自惚れたAは薄く頬を赤らめて礼を言う。
真正面から自分を見てくれた灰崎が純粋に嬉しかったのだろう。もっとも野坂は死んだ魚のような眼差しを向けておりご不満そうだが。
「ってことでこの話は終わりね。その代わり風丸先輩たちがFFのお話をしてくれるそうよ」
胸の前で両手を合わせて音を出した
Aはそう言って話の趣旨を
無理矢理風丸たち先輩に投げ捨てた。
(ほんとですか！？)
(日暮…お前なあ)
(まあいいじゃないか風丸、話してやろうぜ！)
(ったく)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
