思惑 ページ13
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衝撃の新事実が発覚。突然告げられたフロイ本人の口から告げられたオリオンの使徒は一人も存在しないという白を匂わす発言に、ロシアを警戒していた誰もがその先の二の句を告げなかった。
「オリオンを認めないってどういうこと？ギリカナンと関係があるんでしょ？」
「は、はい……そのはずなんですけど」
眉を顰めて訊ねるAにたいし、こればかりは光にもフロイが何を考えているのか読めなくなった。
「おい、なんかアイツこっち来るぞ！」
剛陣の焦った声と共にいつの間にか
鳴っていた靴音がAの前でピタリと止まった。
「フロイ…」
「彼女に挨拶がしたい」
嫌な予感がした光は白髪の少年…
フロイに睨みを利かせると、すかさず
彼女を庇うように前に立ち、後ろ背に隠した。
「それはなんのために…」
「挨拶をするのに理由なんているかい？」
「理由がないなら先輩には会わせられない」
「うーん、よわったな」
困った、困った。とわざとらしく呟いて袖の中に手を入れ、腕を組みながらその場をぐるぐると無駄に歩き回るフロイを静かに目で追う光。
「いいよ一星くん、挨拶くらいなら」
「お？」
周りからの視線にも耐えられず、Aが後ろから光の腕を掴んで肩から顔を覗かせるとフロイは小さな声を上げて立ち止まり、腕を組んだまま引き返す。
「でも先輩…」
「大丈夫、こんなに大勢がいる前で妙な真似なんていくらなんでもしないと思うから」
「先輩がそこまで言うなら、分かりました」
待てをされた犬のように、にこにこと笑顔を一面に浮かばせて尻尾を振る…(ように見える)フロイを一瞥してAが光に耳打ちをすると彼は渋々頷いた。
そして光が後ろに数歩下がると肯定と見た
フロイがさっそくAの前へ歩み寄る。
「日暮A、君のことは彼から色々と話を聞いていたんだ。会うことができて光栄だよ」
「こちらこそ」
いくら素性の分からない者とは言え、フレンドリーに差し伸べられた手を取らないわけにもいかず、Aは自分の掌を見つめると恐る恐るその手を伸ばした。
「あ、あの」
「ん？なに？」
「いや、何じゃなくて…手」
「手がどうかした？」
握手を交わしてから暫く経っても
何故かその手は離してもらえず
Aは、目の前で屈託のない目を細めて
笑って惚けるフロイを睨みつけた。
(……フロイくん)
(フロイでいいよA)
(いや、馴れ馴れしすぎるから)
(そう？ロシアではこれが普通なんだけどね)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
