イタリア人 ページ2
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ロシア空港に到着した日本の前に突如として現れたカールがかかった髭が特徴的な外国人男性。その正体は、監督が直々に依頼したロシアの観光ガイドであった。
「大分個性的ですね」
個性的なお面を被った子文ですらこの反応だ。
「なんかエセっぽくない？」
「エセっぽいですね」
「あとあの髭なに」
「親分並に鬱陶しい髭してますね」
飄々とした態度と掴みどころのない男を見つめたまま思ったことを躊躇いもなく口にしたAに子文も同感だとお面を縦に振った。
「ハオくんもそう思う？」
「はい、姉御」
コソコソと顔を寄せて男を一瞥しては話し合う子文とAに光は「失礼だよ二人とも」と苦笑した。
「私めはパンビエッタスコーリオでーす！」
両手を合わせて響きのいい音を鳴らすと、歌うように節をつけて自己紹介をするスコーリオに
「なんか暑苦しそうだな」
と、不動が鬱陶しそうな顔で呟く。
それに気を悪くしたのか、男は顔を顰めると
やれやれというふうに首を横に振り出した。
「暑苦しくあーりませんよ。あなたの方こそ、頭寒そうでーす」
「んだと！？このインチキロシア人が！！」
気に入っている髪型を遠回しにバカにされた不動は地の底から響くようなドスの効いた声を上げた。
その後ろで口をもごもごと動かし、眉をピクピクと痙攣させながら今にも笑いそうになるAの口を、隣にいた光が素早く手で塞いだ。
「ロシーアにいるけど、イタリア人なのでーす。なので、ロシア語も日本語もカタコトでーす！」
堂々と胸を張って言い放ったスコーリオに
その場にいた誰もが頬を引き攣らせた。
いまいち掴めないガイドに不安を抱える選手たち。飄々とした者同士気が合うのが監督とスコーリオはすっかり意気投合して会話に花を咲かせている。
「みんな」
そこへ、凛とした少女の声が
日本選手たちに向かって掛けられた。
声のした方向を振り向くとそこには
ウェーブがかかった茶色の長い髪に
赤色のつり上がった目が特徴的な雷門夏未の姿。
「そうか、夏未は先に来てたのか」
「ええ。先に入って他の国の情報を集めていたの。情報はスピードが大事でしょ？」
円堂の問いかけに、人差し指を立てて当たり前のように答えながら夏未は、パンプスの音を鳴らして優雅に歩く。その姿は美しく、まさに百合の花だ。
(豪炎寺くん足の方は？)
(まだサッカーは無理だが、日常生活には問題ない)
(早く復帰できるといいわね)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
