新たなる舞台 ページ1
❀
窓の外の景色が徐々に大きくなり
Aは自分が光の海に呑み込まれるのを感じた。
やがて、小さな衝撃があって、飛行機は
ほぼ定刻通りにロシアカザニ空港に着陸した。
飛行機から降機して、鞄を肩に下げたままAは深呼吸を繰り返すと、次に腕を天井に向かって大きく伸びをしながら空港に続くの通路を歩いていた。
「そう言えば、ロシアの時間は16時ぐらいだけど日本との時差ってどのくらいなの？」
イレブンバンドで時刻を確認したAがふと、エナメルバッグを肩から腰に下げて隣を歩く光に訊ねる。彼はロシアでの滞在期間も長く、様々な知識がその頭に入っていた。
「日本との時差はだいたい六時間程度と言われていて、時間的には日本の方が早いんです。ですから今の日本時間は夜の22時前後だと思われます」
「へぇ、そうなんだ。意外と時差があるんだね」
まるで観光ガイドのように流暢に
ロシアと日本の時差について簡潔に
説明をした光にAは感心したような
声を出して納得したように頷いた。
暫くターミナルから続く廊下を歩いていると、前方から人々の賑わう声と共に空港ロビーの眩い天井からの光が薄暗い廊下に射し込み、選手を照らした。
「ここがロシア！やっぱり日本とは雰囲気違うな」
先頭を歩いていた明日人がロビーに到着すると、物珍しそうに周辺を見回す。 空港内の雰囲気も東京の空港とロシア空港とではどこか違う。
「明日人、キョロキョロしてると田舎者と思われるだろ？」
と、子供のように目を輝かせて辺りを
見渡す明日人に、周囲の目を気にした
氷浦が恥ずかしそうに苦言を呈した。
「はーい！」
全員が空港内のロビーへ集まると、イナズマジャパンを待っていたましたと言わんばかりに両腕を大きく振りながら外国人男性が大きな声で挨拶をする。
「プリヴィエート！ダブローパジャーラヴァチ！かみなりジャパンの皆さん、ようこそ！」
外国人にしてはカタコトの言葉で話して現れた背の高い金髪の男。透き通るような肌にほっそりした優雅なつくりの体。手も男性にしては華奢な方だ。
「だ、だぶろーぱじゃ？」
「ロシア語で "ようこそ"という意味です」
男の放ったロシア語にAはたどたどしい
口調で復唱する中で首もゆっくり左に倒す。
そんなAに苦笑した光がその言葉を
翻訳すると彼女は数回目を瞬かせた後
すぐに顔を顰めた。
(あの人なんでわざわざ二ヶ国語で話したの？)
(さ、さあ)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年4月5日 16時
