星を超えた想いを21【オリオンの刻印】 (ページ45)

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謙遜ページ45

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「君もFFを支えた立派な立役者だと思うけどね」

「立役者は言い過ぎな気もするけど……」

「そう謙遜する必要は無いよ」

「するってば、謙遜」

まだ一度も昼食に手をつけず、眺めるように見つめて、真顔で褒めてくる野坂に、こそばゆいのかAは困ったように苦笑で誤魔化した。

「でも、良い気分転換にはなるんじゃない？」

「うーん…」

箸を唇にあてがい、視線を宙に投げて唸るA。暫くして、答えが出たのか、彼女は箸をお膳の上に置いてから、野坂に向かい合う。

「そうね……せっかくだし受けてみようかな」

「ほんと？」

「うん。私にとってもいい経験になると思うし」

光の宿らない無機質な灰色の瞳が、一瞬嬉しそうに細められると、Aもつられて微笑した。

「紀村さんには僕から伝えておくよ」

「ありがとう、野坂くん」

話も一区切りつき、前に座り直した野坂は、口元に弧を描くとお椀の蓋を開けて、野菜に手をつける。

「ってことだから、光く………」

二人だけで会話が弾み、蚊帳の外だった

光にAが事情を説明しようとして振り返った

途端、彼女は言葉を途切れさせ、固まった。

「ひ、光くん！？

こ、こぼれてる、こぼれてるからっ！」

「へ…？」

Aの声で我に返ったのか、今まで恍惚とした顔で箸を咥えたままAを見つめていた光は、目の前で自分の膝を指さす彼女に小首を傾げた。

今まで気づかなかったが…………

確かに太ももあたりが生暖かい。

そう思いながら恐る恐る視線を下げてみると…

「な、なな、なんですかこれ！？」

「味噌汁だね」

「つっこまなくていいから野坂くん！」

光のジャージに味噌汁がかかっていた。

どうやら本人がぼーっとしていたため

お椀が傾いているのに気づかず…

そのまま太もも付近に、だばーという構図だ。

驚いた光が勢いよく立ち上がったせいで、お椀も床に落下してしまい、具材が飛び散っている。

「野坂くん、布巾取って！」

「これのこと？」

「そうそれ！」

テーブルの端に置いていた布巾を摘んだ野坂に首を縦に振ると、掌にはらりと落とされる。

「なんかすごい音したけど……って一星!?」

「お前、どうしたんだよそれ！」

「あ、はは………えっと……」

隣のテーブルから明日人、剛陣が

騒ぎに駆けつけて、味噌汁塗れになり

尻もちをついている一星を見た途端

目をひん剥かせて唖然としていた。

当の本人、一星はと言うと、苦笑をするしかない。