星を超えた想いを21【オリオンの刻印】 (ページ41)

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小さな盾ページ41

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「それなら俺は………どうしたら、いいんだ

先輩を苦しめたくないから離れたいのに

その俺が、いなくなることで先輩を

苦しめるなら、俺は、どうしたら……！」

苦渋の回答を迫られ、歯を食いしばったまま運命の選択に苦しむ光。いかに、事の内容が容易でないかを、その眉が語っていた。

「簡単なことだよ。一星"充"としてではなく、これからは一星"光"として、彼女の盾になればいい」

矛盾は膨れるばかりで頭が破裂しそうになった光に、野坂の声がエコーがかかったように響いた。

「た、て？」

頭を抱え、苦闘していた光に、野坂自らが、その道を切り開かせるように諭し、優しくも慈悲深い口調で云えば、一方の光は、固くなっていた肩の凝りがすーっと溶けたような気がして、野坂を見上げた。

「君が感じる彼女への負い目や罪悪感を忘れずに、それを常に背負いながら守って、ちゃんとAちゃんのそばにいてあげることが、今の君に課せられた新たな"使命"だよ、一星光くん」

皇帝の勅命ってところかな。と、顎に添えていた手を離し、腕を組み直した野坂は目を糸のように細めて、おどけるような口調で付け足したが、その声色は誤魔化しの聞かない強い何かを感じられた。

「(そうだ……俺は……先輩に、たくさん取り返しのつかないことをしてきた。例えそれが兄ちゃんの意思でやったとしても、それは兄ちゃんだけのせいじゃない。俺にだって責任がある)」

野坂のその言葉がキッカケとなったのか

はたまた、どこかで感じていた思いの

引き金を引かせたのか定かではない、が。

少なくとも光の心には、刻まれるように響き
想念が気持ちの中に煮えるように沸き立っていた。

「(先輩が、その先輩が
俺を必要としてくれているなら……)」

「恩返し」そこに秘められたとくべつな響きに反応したように、光は一瞬目を伏せた。

「(例えそれが兄ちゃんでも、俺は受け入れたい……兄ちゃんが大切にしたこの人を、"守りたい")」

しかしすぐに目を上げれば、光は

迷いの吹っ切れた顔つきに変わった。

彼の中で小さな渦のようなものが、突然

巻き起こり、そしてすぐに静まったように見えた。

「決めたんだね、一星くん」

こくり、と頷く光に野坂は目を細め

「いい目になった……」と声を潜めて云った。

そして光は、野坂の眼に見えぬ力に

打たれたように、荷物の紐を持つ

手の力を込めと「先輩」今まで

一言も話さなかったAの背に、呼びかけた。