星を超えた想いを21【オリオンの刻印】 (ページ28)

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五文字の言葉に想いを込めてページ28

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青ざめた彼女の顔の中に泣き腫れた瞼が

うす赤い二枚の貝殻のようにとじていて

ときどき息を吸うたびにひくひくと

唇が動くのが、例えようもなく哀れに見えた。

「(だめ、こんな別れ方、絶対だめ
…………絶対、絶対に、後悔する！)」

掌で顔を覆いながら何が最善か、必死に考える。

更衣室は幻想的な光の空間に包まれて

あと数秒の、別れの時間を告げていた。

こうしている間にも

一星の身体は足元から消えかけている。

Aは＿＿＿＿覚悟を決めた。

「…充くん！！」

泣き声を上げすぎたせいで声が裏返った。

それでも彼女は気にせず、一星に歩みを進める。

名前を呼ぶと、寂しげに頭を俯かせていた

一星の顔がゆっくりとあげられた。

その瞬間を狙って、Aは一星の首に
腕を回すと、正面から抱きついた。
身体がまだ消えていなかったのが、幸いした。

「A…？」

僅かにしか感じられない一星の感触に肌を寄せて、Aは戸惑う彼の首筋に顔を埋め、泣きたい衝動を耐え忍んで息を整えると、口を開いた。

「今まで、いっぱい、いっぱい、ありがとう」

彼女が告げたのは、精一杯の感謝の言葉。

出会えたこと、触れたこと感情を教えてくれたこと、シュートの打ち方を教えてくれたこと…………好きに、なってくれたこと。その全ての気持ちを込めて、たった五文字に深々と刻み込ませた。

「大好きだよ、充くん」

「せん、ぱ………い」

「好き…………ずっと、これからも好きだから！」

首筋に埋めていた顔を上げて、至近距離から

歯を見せて無邪気に笑ったA。

瞼を焼くような熱い涙が一星の目から流れ出ると、そのまま顔を横から覗き込ませていた彼女の目元に零れ落ち、涙の痕が痛々しく残るその頬を涙で濡らしてしまう。

「やっぱり…やっぱり、俺。

お前のその顔……好きだな」

抑えていた感情が、ここに来て溢れだしてしまい、涙に濡れた一星の声が弱々しくAの耳を擽る。

「(大丈夫……………大丈夫)」

心の中でそう自分に言い聞かせると

一星の首に回していた腕を解き

互いの顔が最期に、見えるように後ろへ下がった。

「これで、本当に最期だな」

「だね……」

そう言った自分の顔が、本当に

心からちゃんと笑えている自身がない。

そんなAは口元を少しだけ引き攣らせてしまう………しかしそれは、蛍が放つような光に包まれている一星も同じことだった。