星を超えた想いを21【オリオンの刻印】 (ページ27)

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言い逃げページ27

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少女の瑠璃色に輝く瞳と細長い睫毛とが

黒耀石のように結晶すると、そこから

しとり、しとりと、雫が垂れた。

「俺は、先輩の笑った顔が一番好きなんです」

涙と一緒に突き上げてくる呼吸を
唇を堅く結んで、押さえている様な
表情をする少女の頬に手を添えようとした。

「だから、最後は笑顔で見送ってください」

しかし、少年の手が彼女に触れることは無かった。
薄く透明になっていくその手は、触れることなくすり抜けて、触れることすら許さなかった。

「いかないで……いって、ほしくない！」

Aが一星の手を掴もうとしても、二人の手は交わることなくすり抜けて、それでも彼女は一星の手を掴もうと何度も何度も手を伸ばし続けた。

「自分だけ言い逃げなんて
そんなのずるい………ずるいよ！」

「A………やめろ」

必死に自分の手を掴もうとするAの姿が

一星は見ていられず、肩を小刻みに震わせた。

「私も、充くんに伝えきれてない気持ち、いっぱい、いっぱい………あるのに、っなん、で！」

もう………！と、何度もすり抜けてしまう事に腹が立った。一星の肩や腕や手の温もり、そのすべてを肌で感じたかった。光に包まれ始める更衣室のこの淡い景色も、頬を伝う涙の熱さも、すべてを記憶したいとAは切望した。

「充くんと、もっと、一緒にいたい！サッカーも、一緒にしたい！海遊館にも行きたい！デート、だって！また、遊園地にも行きたいの！」

途切れ途切れの言葉に、嗚咽が混じって

掠れて、聞き取るに堪えない声だろう。

肺が苦しい。情けなさと自分のみっともなさが手に取るように見えてきて、息継ぎも会話も成り立たなくなって、涙ばかりがあたりに散らばっていく。

「今度は拒んだり、なんてしないから……っ……充くんの、好きにして……いい、から！」

「A…」

困らせてしまうことは分かっている。

だが、これで"最後"なのだ。

「だか、ら……だから！」

本当に、泣いても笑っても

一星充にはもう"二度と会えない"。

そう考えれば考えるほど、Aの頭は
バカになり、気持ちをさらけ出してしまった。

「離れたく、ない………
離れたくないよ…………充くんッ！！」

悲しみに溢れた喉を振り絞って声をあげる。

涙でくしゃくしゃになった泣き顔で

寄った眉がビリビリ動き

耐えられなくなったAは、顔を両手覆い

肩を細かく震わせて、咽び泣いてしまう。