心配性 ページ3
❀
「泣かないで、充くん。私は、大丈夫だから」
「俺のせいで、また………お前が、傷ついて」
弱々しくなっていく声は言葉に合わせて
震えていき、一星は頭を俯かせてしまう。
「充くんのせいじゃないよ
敵の攻撃に不意をつかれた私のミスだから」
気丈にも涙は見せてはいなかったが
瞳は涙に濡れており、Aは一星に
心配させまいと、片膝に手を乗せると
軋む体にムチを打ちふらつきながらも
体勢を保ち、立ち上がった。
「ほ、本当に大丈夫なのか？無理、してないか？」
「充くんって心配性だね」
「……怖いんだ。またお前に、何かあったら」
「無理もしてないし、本当に大丈夫だよ」
恐怖から震える一星の拳に目を落とした
Aは、困ったように眉を下げると彼の
頭に手を伸ばし、数回優しく撫でた。
「それに、どんな形でも
私は、充くんとサッカーをしていたいから」
はっと、見開いた一星の蒼眼が水面のように
反射して、Aの姿を映し込む。
「だから怪我をしても、最後までそばにいたい」
「A……」
度々、彼女の口から紡がれる"最後"という言葉。
その意味がいつも分からず、一星は苦しそうに
髪の色と同じ紺色の眉をきゅーっと顰めた。
「そんな理由は……… わがまま、かな？」
「そんなことない！俺達は一緒だ！」
試合中だということを忘れてしまいそうになる。
華奢なAの手を掴んで、首を横に振る一星。
「俺とAはずっと………っ、」
「み、充くん！」
「いっ、しょに……………いる、お前と」
急激な頭痛に再び苛まれ、掴んでいた
Aの手を滑り落とすと、一星は
自身の頭を抱えて、その場で呻き声をあげる。
それでも尚、痛む頭に苦しみながらも
声を振り絞って思いを告げた
一星にAは、悲しげに目を伏せた。
「そう、だね。ずっと一緒だね」
そう言ったAの顔は、今にも泣きそうだった。
「A、一星！大丈夫か！？」
「明日人…」
今までマークにあたっていた明日人が
二人の元へと駆け寄り、頭を押さえる
一星を心配そうに見つめる。
「私は大丈夫だけど、充くんが」
「一星、やっぱりまだ頭が……」
気づかれないうちに、顔を一度背けて
手の甲で零れそうになった涙を拭った
Aは明日人と共に動悸を激しくさせて
髪の毛を乱暴に、くしゃりと掴む一星を
見ていることしか出来なかった＿＿＿＿＿＿。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年1月26日 19時
