兄弟の想い ページ10
❀
刺すような疑惑が胸の底に蟠り、一星は
壊れた人形のように頭を振り子のように振り乱す。
こうしている間にも、雲間の間から突き抜けた
隕石は降下する事にその威力を増して
二人の元へと襲いかかろうとする。
「何やってんだA！早く逃げろよ！！」
「日暮！！」
「一星も早く！！」
爆煙の奥から、微かだが人影が見えた。
シルエットから察するに、ヒロト。氷浦。
明日人たちが、切羽詰まったような声で
煙の中に巻かれるAと一星に叫んでいた。
「(充くんが苦しんでるのに……
私だけ逃げるなんて、できるわけない！)」
そうは言っても、体は正直だった。
恐怖から、竦み上がった足は
ガクガクと情けないほどに震えていた。
「(ダメ！もう、間に合わない………ッ)」
頭を抱えて震える一星を横から覆うように
抱きしめて衝撃がかからないよう、一星の頭を
庇うようにして、Aはゆっくりと腕を回した。
「(せめて、せめて、充くんだけでも……ッ)」
「A？A？」
びくっ、と体を大袈裟に跳ねらせて
Aの腕の中に包まれながら困惑する一星。
「絶対、守るから………助けるから」
「A……………………ッ！？」
一星の首筋に顔を埋めて、頭を掻き抱くようにして、背中からの衝撃に身を任せるA。
そんなAの腕の隙間から垣間見えた迫る隕石の光景に、一星の蒼眼の瞳は大きく見開かれていく。
「A、はな、して、A！ダメ、ダメだよAさん！兄ちゃんを、離して……離せ、A！」
何が起きるかなんて、容易に想像ができた。
一星と、一星の中にいる少年は忙しなく
髪色や風貌を変えていきながらAから
離れようと肩を押し返すが、彼女はそれと
同じくらい、震える腕で一星を力強く抱き締めた。
「や、やめろA！やめて……Aさん！
A、やめろ！やめ……っ！」
爆音と共に、体に感じたことの無い
強い衝撃を受け、声にならない声を上げた
Aは、ぐったりと、体を一星に凭れかける。
突然の重みに耐えられず、そのまま
重なり合うようにフィールドに倒れる一星とA。
ひゅっ、という一星の息を呑む音が耳元で
聞こえたと同時に、遠のく意識の中。
明日人と野坂の劈くような呼び声を最後に
ぷつん、と何かが音を立てて切れて
Aは、目の前が真っ黒になった＿＿＿＿。
(A、ちゃ、ん………Aちゃん！！)
(一星、しっかりしろ、一星！！)
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年1月19日 19時
