星を超えた想いを20【オリオンの刻印】 (ページ9)

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虚脱状態ページ9

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自分に新しい夢をくれたAと、かけがえのない

弟の為にも、一星は何もかもかなぐり捨てて

がむしゃらにAの腕を引いて走り続ける。

その時＿＿

『兄ちゃん、俺のことはもういいんだ……！』

一星は初めて、自分の中にいる

"誰か"の存在に気がついた。

『これ以上、Aさんを苦しめないであげて…！』

「俺が、Aを、苦しめ、る？そんな、こと……」

入れ替わり、立ち代るように

自分と別の誰かが交互に姿を現しては

訴えかけてくるもう一人の誰かに

一星はわけがわからず、自分を見失い始める。

『兄ちゃんの優しさが、今の先輩にとって、一番辛いことなんだ………分かってあげて！』

近くにいるはずのAの声すらも、遠く聞こえて、一星の視界は次第に霞み、何も映さなくなる。

Aの腕を引いて、走っていた一星光は

兄に訴えかけるように涙を溢れさせた。

『兄ちゃん、俺にもう……………"構わないで"』

自分が誰なのか、何故にいるのか

何が起きているのか分からず、一星は

掴んでいたAの腕を手放すと

崩れ落ちるようにその場に膝をつき

頭を抱え、振りしぼるような叫び声を

スタジアムに切り裂くように響き上げた＿＿＿。

「み、充くん！！」

力なく膝から崩れ落ち、地に伏したまま悲痛な叫び声を上げる一星の頭上には、今までの非ではないほどの巨大隕石が落下し始めていた。

「に、逃げないと！充くん、動いて！」

覚束無い足取りで、前のめりに転けそうになりながらも、Aは慌てて一星に駆け寄り、頭を抱える腕を掴んで立ち上がらせようとする。

「お願い、充くん！お願いだから立って！
早く、早くしないと……！」

しかし、茫然自失に陥った一星はピクリとも動かず、何かに怯えるように頭を抱えている。

「俺、は……………俺、は、誰、なんだ……」

ぽつり、ぽつりと紡がれた一星の言葉に

Aは瑠璃色の瞳を大きく見開かせ

思わず、掴んでいた手を離してしまう。

「なぁA、教えて……俺は、"誰"なんだ？」

狼に怯えきった子犬のような表情で

離れたAの手首を掴んで、訴えかける一星。

「しっかりして！充くんは充くんでしょ！？
他の誰でもない、一星充！私の大切な………」

そこまで言いかけると、Aは言葉を詰まらせた。

「(大切な、なに………？何を、言いかけたの？)」

自分の言おうとしたその先の言葉が分からず

Aは狼狽の色を隠せず、自問自答を繰り返す。