星を超えた想いを20【オリオンの刻印】 (ページ43)

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一星の告白ページ43

❀

「あんたに嫌われたっていい。

この気持ちは、この気持ちだけは

嘘じゃない……俺の本心、だから」

極限まで見開かれた硝子玉のような彼女の眼。

同時に、心臓の音が、一段と高鳴り

口から弾け飛びそうになるほど、騒ぎ始める。

ただその想いを通じられるように、掻き抱いた。

「本当は、野坂にも他のヤツらにも渡したくない！取られたく、ない………ッ！」

空気の分子の隙間すら二人の間に

入らないほど、身体を密着させた一星。

「俺だけの、俺のAで、いてほしい。

……それほど、あんたのことが」

互いの脈を打つ激しい鼓動の音が

服越しに伝わり、それだけで満たされた。

＿＿＿＿＿＿＿好きだ、A。

最後にもう一度告げられた精一杯の気持ち。

Aの息を呑む音と、あえぐような呼吸が

一星の耳に、はっきりと聞こえた＿＿＿＿＿。

心を指で触られているかのように切なかった。

先の事を考える度に胸が痛くて、苦しくて

切なくて、解放されたいのと

心のどこかでは嬉しくて、求めたいのと。

そんな相反する感情に引き裂かれそうになり

………Aの心は悲鳴をあげた。

「A」

「みつ、る＿＿＿くん、わたし、私…っ」

今まで食い止めていた気持ちが

一星の一声で、タガが外れたように

一気に胸を突き上げるような切なさが

込み上げ、ほとばしる感情が抑圧を

突き破って、意識の地表へと噴き上げてしまう。

もう、胸の高鳴りは＿＿＿＿抑えられなかった。

「 A、俺を見て」

今までと比べ物にならないほどに

蕩けるような甘い声で一星が名を呼べば

Aは涙に濡れた、潤んだ瞳のまま顔を上げる。

至近距離で、激しくぶつかった一星の的のような形状の中に嵌め込まれた蒼眼と、Aの瑠璃色の眼。

どちらも互いの目を見つめたまま動かず

二人の視線が、縄のように捩れて甘く絡まり合う。

そして、目を交し合い、以心伝心で

伝え合ったかのように、一星が彼女の

瞳を見つめたまま自然な動きで

壊れ物を扱うかのように後頭部に手を回す。

そしてAもまた、一星の瞳を見つめたまま

彼のユニフォームの袖を、掴んで握った。

「 A 」
「充くん」

まるで、名前を呼び合うのが、合図のように

一星が後頭部を徐々に引き寄せていくと

二人は同時にその瞼を閉じていく。

数秒後、柔らかい温もりが唇に伝わった。