星を超えた想いを20【オリオンの刻印】 (ページ40)

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信じる気持ちページ40

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「私を信じて」

『(兄、ちゃんの好きな、笑顔)』

手を差し伸べたまま、微笑みをたたえた

Aに呆気に取られていた光は

我に返ると、視線を恥ずかしそうに泳がせて

顔色を窺いながら、恐る恐る彼女の手を掴んだ。

離さないように、離れないように

自分よりも一回り大きなその手を

ぎゅっと握り、立ち上がらせると

Aは、光の手を引きながらスタジアムの

選手入場ゲートへ進み、連れ歩いていく。

光の腕を引いたAと野坂がすれ違う直前。

二人は、流し目に互いを一瞥しあい、微笑んだ。

スタジアムにはびこり、木霊した観客の盛り上がる歓声が、入場ゲートのトンネルの中でも反響した。

ここでいいか………と。外からの光が

射し込む場所に移動したAは立ち止まると

掴んでいた一星の手を放し、振り返る。

「あ、れ？なんで、俺こんなところに」

光は＿＿＿また充に戻っていた。

記憶が無いのか、一星は首を曲げて

辺りを見渡している。

「充くん」

「A？」

か細い声で名前を呼べば、黒目がちな

一星の瞳が、Aを映して小首を傾げた。

「これが、本当に最後になる、から」

途切れ途切れに紡がれていく言葉。

そこまで言いかけると、Aは

ゆっくりと頭を俯かせたまま、一星に

一歩。また一歩と距離を詰めていく。

「最、後？」
「充くん……私」

続けていた話の糸目をつなごうとしたA 。

「その……あの、ね」しかし話の糸口は思うように出て来ず、言葉を用意していたはずなのに、急に頭が混乱して切り出す言葉に迷ってしまったのだ。

「A、いったい」

何故自分がここにいるのか理解出来ぬまま

一星は頭を俯かせて、わなわなと震える

彼女を前に、狼狽の色を隠せない。

「ごめん」

「えっ……」

その声と共に、今まで、頭を俯かせていた

Aが覚悟を決めたように顔を上げた。

ほんのりと赤らんだ頬。潤んだ瞳。

その全てらが一星の目に飛び込んでくる。

距離を一気に詰められ、反応をする前に

彼女の冷たい手が一星の両頬に添えられる。

「せん、ぱ……！？」

＿＿爪先立ちをして、少しだけ背伸びをした

Aの顔が、ゆっくりと一星に近づいた。

考える間もなく、反射的に目を瞑る一星。

そして数秒後…………

ちゅ、という可愛らしいリップ音が互いの

耳に欹ったと共に、一瞬だけ

柔らかく、生温かい感触が一星の額に伝わった。