星を超えた想いを20【オリオンの刻印】 (ページ34)

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論点ページ34

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「冷静になるんだ、二人とも！こんなところで歪み合ってる場合じゃないだろ」

タツヤ自身も、声を荒らげることには

慣れておらず、乱れた息を整えるよう

息を吐くと、すっかり恐縮した様子を

見せる二人を交互に見つめて、言い放った。

「こいつが、わけわかんねぇこと言うからだろ…」

「一先ず、彼女の話を聞くんだ。
問い詰めるのは、それからでも遅くはない」

日暮さんもそれでいいね？と首を傾けて

顔を向けたタツヤにAは小さく頷く。

「(何で、いつもこうなんだよ…)」

「(何ヒロトに当たってるのよ、私)」

そんな事を互いに思っているとは知らずに

ふっと、二人の視線が絡むと、両者は

バツが悪そうに眉を顰めて、顔を逸らしてしまう。

すると、突然。

今まで、Aに抱きしめられていた一星が

しゃくり声を上げて、嗚咽を口から漏らし始めた。

『こわ、い…兄ちゃん！
この人たち、どうして急に怒鳴ったの？
怖い、怖いよ……にい、ちゃん！』

いつの間にか、また充から光へと

人格を変えていた一星は、耳元で

張り裂けんばかりの怒号を聞いたせいで

追い詰められた小動物のように怯え

体を再び震わせてしまう。

「ち、違うの光くん！光くんに怒ってるとかじゃなくて……ご、ごめん！…急に怒鳴ってごめんね」

そんな光の背中を安心させるように擦りながら、「驚かせて、ごめんね光くん」と狼狽の色を顔に表したままAは、自分の不甲斐なさを悔やみながら、謝ることしかできなかった。

「A」

「円堂さん」

光の乱れた吐息が吹きかかるのを首筋に感じながら、あやす様に背中を撫でていると、そんな二人の前に円堂が歩み寄る。

「俺たちにも、話してくれないか？
なんでお前が、一星を救いたくないのか」

円堂は、自身を見上げるAに気遣い、目線を合わせるように片膝を地面について、屈んだ。

「救いたく無いわけじゃ、ないんです。
本当は、私も助けたい……
充くんを救えるのは、私だって嬉しいから」

Aは、真剣な眼差しを向けてくる

円堂を見ながら、言いにくそうに言葉を放つ。

彼女のその気持ちに、嘘も偽りもなかった。

「じゃあ、どうして？」

「俺たちと同じなら、断る理由なんてないだろ」

「だよ、な…そうだぜ日暮！」

氷浦、万作、剛陣が頭を悩ませながら

口々にそう言うと、Aは首を静かに振った。

彼女の一星に対する"論点"は、そこではなかった。