一致 ページ31
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イナズマジャパンベンチに、沈黙が流れ込む。
周囲の観客の声がはっきりと選手たちの
耳に流れ込んでくる中で、彼らの視線は
座り込んだまま動かない
何も出来ない歯痒さと、もどかしさに
微かな苛立ちに似た思いが、腹の中で渦巻いた
＿＿＿＿＿刹那。
「よし、やろう！」
ぱんっ。とグローブの音を鳴らして
自身の掌を拳で叩いた円堂が、その沈黙を破った。
「円堂さん !? 」
「本気かよ………」
「一星の面倒見ながら試合しろってのかよ？」
円堂の突飛な提言に、ヒロトは狐に摘まれたような顔をし、灰崎は額に汗を滲ませ、不動に至っては、呆れたという風に肩をすぼめていた。
「心配するな。ゴールは、俺が守ってみせる！」
にひひっ、と白い歯を見せて笑う円堂。
何の変哲もない言葉でさえ、円堂が言えば
不思議と"この人になら背中を任せられる"
誰もがそう思うような、安心感を与えられた。
「大丈夫………サッカーなら。
サッカーが、きっと一星を助けてくれる」
Aに抱きしめられている一星の顔を
横から覗き込みながら明日人が宥めるように
言うと、一星の震えが一瞬止まり
肩口から顔を上げて、明日人を見上げた。
「俺達が熱い想いを込めれば
きっとサッカーは、一星を助けてくれるよ！」
膝に片手を置き、ゆっくりと立ち上がった
明日人は顔を曇らせ、暗い表情を
顔に浮かばせる仲間達に振り返り、語りかける。
「やろう………やろうよ、みんな！」
明日人の真っ直ぐで、淀みのない瞳と陽だまりのような温かさを持つその笑顔に、彼をよく知る氷浦と万作は困ったように、やれやれと眉尻を下げると、視線をぶつからせて、賛同するように頷いた。
「明日人の言う通りだ！俺達は一星を助けて、試合にも勝つ！さあ。みんな、後半戦もいくぞ！」
この試合で、"一星充"を必ず救い出す。
その思いを胸に、今までバラバラだった
心のパズルのピースは、円堂の名の元に
集結し、選手全員の意見が初めて一致した……
そう誰もが思い「おおっ！」と声を重ねて
拳を空へと掲げた、その時。
「 "やだ" 」
少女の、凛と張った声が、彼らの耳にそばだった。
たった二文字だけの否定派の言葉は
団結しかけていた選手達の心に重くのしかかり
ヤケに大きく、そして虚しく、ベンチに響いた＿＿
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年1月19日 19時
