親子 ページ23
❀
あれから数分が経ち、泣き喚いていた一星は
落ち着いたのか、肩をひくっ。ひくっと
上下に揺らしながらAの肩から顔を上げた。
そしてAは一星の手を掴んでベンチに
誘導するように腰掛けさせる。
「充くん、落ち着いた？」
「は、い………すみま、せ、んっ」
「謝らないで？私は気にしてないから」
ずびび、と鼻を啜って涙でぐしゃぐしゃに
なった一星の顔にAは困ったように
眉尻を下げると、つくしからハンカチを
貸してもらい、優しく一星の頬に押し当てた。
「いい子、いい子」
「子供、扱い、する、な………っ！」
「充くんも私もまだ子供だよ」
中学生だし………でしょ？と言いながら
情けなく太眉を下げる一星の顔に
染み付いた涙と汗の跡を拭っていくA。
「なんかお前らって"親子"みたいだよな」
「…………………………」
「…………………………」
「な、なんだよお前ら。急に黙りこくって」
"親子"何気なく言い放った剛陣のその言葉に
Aと一星が "ぴしり" と固まった。
二人は同時に剛陣に視線を投げると
同時に剛陣から目を逸らした。
「な、なんか不味いこと言ったか？俺」
「……………別に」
「日暮、お前怒っ＿＿＿＿」
「怒ってません」
剛陣のその言葉を遮り、ふいっと
顔を背けて一星の涙を拭き終わった
ハンカチを畳んで、つくしに返すA。
「A……」
「辛かったら、手、握って大丈夫だから」
ね？と一星の涙を拭ったAが微笑めば
一星は頬をほんのりと色づかせたまま
Aから視線を逸らして、頷くと
ぎゅっとAの手ではなく、腕を引き寄せると
お互いの右肩と左肩が触れ合うように密着させた。
ふぅ、と一星が泣き止み、一先ず安心した
Aは隣に座ったまま頭を少しだけ
俯かせている一星を一瞥する。
すると、ベンチに座る二人の上から影が覆う。
「一星、何やってんだよ」
「明日人？」
その影の正体は、明日人だった。
突然の明日人の発言に一星は顔を上げた。
「お前は悪いヤツじゃない。
プレーを見ればわかる。どうして…………
A以外には何も話してくれないんだ？
なんで、Aにしか頼らないんだ？一星」
周りの者たちがずっと気掛かりに
思っていた気持ちを、代弁するかのように
明日人が吐き出した。
Aは、一星を見下ろす明日人と
そんな明日人から気まずそうに目を逸らす一星を
交互に視線を配らせながら、見守っていた＿＿＿。
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作者名：小雪
| 作成日時：2019年1月19日 19時
