星を超えた想いを20【オリオンの刻印】 (ページ2)

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命を懸けてページ2

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「(これで、全てが決まるんだ…………)」

＿＿＿もう、後戻りはできない。
＿＿＿引き返すことも、できない。
Aは己を落ち着かせるように深呼吸を繰り返す。

「(充くん、野坂くん………)」

試合再開と同時に、Aは片足で
固定していたボールに視線を落として
その時が来るのを待った………。

ホイッスルが鳴り響いたその合図と共に

野坂と一星は、地を蹴り、互いに駆け出した。

そして、ボールを持ったまま佇むAの

両側をスローモーションがかけられたように

ゆっくりと横切る。

二人がAの両側を駆け抜けて行った刹那。

「行くよ…………野坂くん、充くん！」

Aは、弾かれたように顔を上げると
勢いよく後ろを振り返り、スピードを
落とさず駆け走る野坂達の背中に声を投げた。

そして、ボールに渾身の力と、様々な思いを

託し、Aは太陽に目掛けて空高く、天高く

上空へとボールを蹴りあげる。

パスしたボールが宙を舞う。

あの高さならいける、そう確信して

野坂と一星は足の裏に力を込め、地を蹴り

向かい合うように思いっきり飛びあがった。

「信じてるよ………」

一つのボールに惹かれていくように、一星と野坂が上空で対面する。緊迫とした状況下の中、Aは胸元で両手を祈るように握りながら「大丈夫、きっと大丈夫」そう呟いて、二人の姿を下から見守る。

降り注ぐ陽の光が、やけに眩しかった＿＿＿。

充くん、とAがその名を呟く間もなく、一星は一気に野坂に距離を詰め、脚を振り上げる。まるで散々やられた野坂の頭を狙うかのように。

フィールド全体が……………いや。

会場全体が静まり返り、注目は野坂達に
自然と集まり、誰かの、はっと
息を呑む声と「野坂さん！」ベンチにいた
西蔭の声も、やけに大きく聞こえた。

永遠に思えた一瞬は案外呆気なく過ぎ去り、野坂の目の前で蹴られたボールが遥か遠くに飛んでいく。

二人の身体が、重力に逆らうことなく

スローモーションで下降していく。

「どう、なったの………」

状況が理解するには、まだ乏しい思考
。
Aは瞬きを繰り返して

落下してくる一星を視界に入れた。

その時＿＿＿。

双眼の奥で仄かに灯る淡い光と
微かに震え、何かをAに伝える
一星のその薄い唇の動きを見て初めて
彼女は、そこで初めて一星の選んだ結末を知った。

"あんたと……………一緒に、いる"

確かに一星は、口パクでそう伝えていた………。