星を超えた想いを16【オリオンの刻印】 (ページ36)

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120%の力ページ36

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「でもよ…………それって悪いことなのか？」

重苦しい沈黙が続く中、それを
破るように泰然とした様子で
監督に質問を投げたのは、剛陣だった_____

「どういう意味ですか？剛陣先輩」

万作を挟んだ隣に座っていた明日人が、顔を覗かせるように上体を前に倒して、剛陣に問い掛ける。

「だってよ、思ったことが叶っちまうミサンガなんだろ？ってことはだ、それを逆手にとっちまえば、日暮のやつ、めちゃくちゃ強えんじゃねえか？」

剛陣の至極真っ当な正論に、彼の左隣に座っていた万作も「確かに………」と納得したように頷いた。

「それはあくまで、日暮ちゃんの
"体がついていけば"の話ですよ、剛陣くん」

「どういうこと？」

明日人は氷浦と顔を見合わせ合うと

監督に視線を移して、その首を傾げた。

「そのままの意味です。

先程日暮ちゃんは体が嘘のように軽くなり

凄まじい速さで走れるようになった……」

そう言っていましたね？と監督が

確認をするようにそう言えば、Aは

ぎこちない動作で首を縦に振り、頷いた。

「人は、誰しもが120%の力を発揮できる

器のようなものを持っていると言われています。

しかし、120%の力などをそう使っては

丈夫ではない人間の体は、まず耐えられません」

そう言いながら、首を横に振ると監督は

頭の上で腕をクロスさせ、バツマークを作った。

「そのために私たちの脳が無意識に

そのリミッターを制御するように

力をコントロールしているのです」

哲学的な話をされ、難しい話が苦手な

剛陣は「わ、わかるか？」と頭を抱えながら

万作たちに小声で話を振るが、明日人たちも

イマイチよく理解出来ていないようだった。

「しかし！日暮ちゃんは、無意識に

そのリミッターを解除し、常人では

ありえないスピードで持ち直すことができました」

後ろ手を組みながら、右と左を行ったり

来たりと繰り返し、意味もなく歩いて

皆にもわかりやすく説明をしていた監督は
「ミサンガの影響でね」と最後にそう付け足した。

「その力を、もし使い続けたりしたら……」

モニター画面の左端で、つくしの隣に

並びたちながら話を聞いていた杏奈が

拳を胸元に当てながら恐る恐る監督に問いかけた。

「身体が悲鳴をあげてしまうでしょうね。

恐らく_____この間のような無茶な

プレーばかりをし続けていれば、何れは

怪我どころではすまなくなるかもしれません」

ごくり、と誰かの息を呑むような音が聞こえた。