星を超えた想いを16【オリオンの刻印】 (ページ34)

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オリオン座ページ34

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「そういやそのミサンガ
お前、韓国戦の時に一星から貰ってたよな」

あっ。と突然、思い出したような調子でヒロトが頭を乗せていた手を放して背もたれに頭を預けると、隣にいたAに顔を向けて言った。

「あっ…そっか、これ一星くんに貰ったんだった」

今まで忘れていた小さな出来事が

ヒロトの一言で昨日のことのように

鮮明な絵で蘇ったAが袖を捲って

ミサンガに目を移しながら他人事のように呟いた。

「お前なぁ……」とことごとく呆れたような声と、じとっとした視線をヒロトに送られた。

「ミサンガのどこかに
オリオン座の模様が描かれていませんか？」

「オリオン座？」

監督にそう言われて、ミサンガに目を落とす。
しかし、星関係に疎いAはどこに
そんなものがあるか分からず、難しそうに
顔を歪めて「うーん……？」と唸って首を傾げた。

「これのことだろ」

横から覗き込んだヒロトがAの

ミサンガの中央に嵌められているかのように

不自然に描かれていたオリオン座を指さす。

「え、あっ。これオリオン座なんだ」
「普通、すぐに分かるだろ」
「可愛い模様だなー、くらいに思ってた」
「…………お前星関係に疎いのな」

観る専門だから、と付け足したAに

昨晩、自分が彼女に月が綺麗ですね、と

言った意味を理解されなかったのが

何となく分かった気がした、ヒロトは

背もたれにぼふっと頭を預けた。

「そのミサンガを使ってから
何か不思議なことは起きていませんか？」

「不思議なこと………」

顎に手を当て、目を伏せたAは

記憶の底に眠る湖の水を、自らの両手で

掬い上げると、間から零れ落ちていった

雫(記憶)が、石を投げた時のように反響した。

それが引き出す引き金となり、Aは

「あっ」と小さな声を上げて瞼を開いた。

「日暮さん、心当たりがあるのか？」

「あ、うん……
ミサンガのせいかは分からないけど」

左隣に座っていたタツヤが顔をAに向けて問い掛けると、Aはそんなタツヤを一瞥してミサンガに視線を落としたまま口を開いた。

「韓国戦の時、ヒロトからのパスを受け取りたくて…………もっと速く、もっと速く走らないと。って心の中で唱えてたら、急に体が軽くなって………速く走れたの」

あの時はA自身も無我夢中だったため

深く気に止めていなかったが今思えば

そうなのだろう…………と、手首に巻かれた

ミサンガを見つめながら物思いに耽っていた。