星を超えた想いを16【オリオンの刻印】 (ページ32)

今日:10 hit、昨日:10 hit、合計:293,465 hit

スパイの人材ページ32

❀

時にチームの味方をし、時に味方の

マイナスになる行動をとり、チームの

誘引誘発を招いたり、試合結果を

オリオン財団が決めたプラン通りに

進めていく役割を担っている…………。

それがオリオンの使徒としての使命であり

運命だと話した監督の説明を聞いた

剛陣が「完全に八百長じゃねえか！」

曲がったことが大嫌いな彼が一番に反論した。

「つまり、今まで不審なプレーをした

連中がそのオリオンの使徒ってわけですね？」

剛陣が露骨に仏頂面を表す中、あくまで

平然を装い、冷静な判断と落ち着いた

口調で、Aの左隣に座っていたタツヤが

顎に手を添えて監督にそう尋ねると、肯定される。

「使徒だかなんだか知らねぇけどよ、このブス操ってたのもそいつらが原因ってことなんだよな？」

「ヒロト？」

ヒロトが隣に座るAを親指で指しながら

一番気掛かりだった的の中心を射るような

質問をすれば、眉間にシワをつくると

「恐らくは…………ですが…………ううむ」

と、珍しく煮え切らない返事をした。

「日暮ちゃん」

「は、はい」

真剣な表情と声で名前を呼ばれると

その監督の緊張が伝わってきたAは

思わず背筋をぴんと伸ばして次の言葉を待った。

「最近"記憶が曖昧"なことはありませんか？」
「えっ」

唐突なその問いかけに、Aは驚いて

二の句が出ずに口をぽかんと小さく

開けたまま固まってしまう。

「なんであんたがその事を知ってんだ」

事情を知る灰崎は訝しげな表情で監督を睨んだ。

「オリオン財団は優れた選手を生み出すためには手段を選ばない卑劣な一面があります。日暮ちゃんは観察眼と洞察力に特化した選手………つまり、オリオン財団にとって今の彼女は、スパイにはもってこいの"人材"ということなのですよ」

素晴らしいですねぇ、さすが日暮ちゃんです！と鼻高々といった様子で拍手を送り、盛り上がる監督。

「褒めるようなことじゃねえだろ！」

そんな流暢でお気楽な監督に、組んでいた

腕の指をリズムよく叩きながら

イライラを募らせていた灰崎が叫んだ。

「はあ………まあ………そう、なんですか？」

「お前反応薄すぎだろ……狙われてんだぞ？」

「だって、いきなりそんな事言われても……困る」

一方、驚きも恐れも見せず、思慮のない顔で

他人事のような感想を述べたAに

ヒロトは呆れて腹も立てぬというような

顔つきで頬杖をついたままため息を零した。