星を超えた想いを16【オリオンの刻印】 (ページ25)

今日:8 hit、昨日:10 hit、合計:293,463 hit

不穏な空気ページ25

❀

"11時に駅前の喫茶店で待ってますから"

そう言って、部屋を出ていった一星。

11時か………と、待ち合わせまで

まだ余裕がある事をイレブンバンドの

時刻で確認したAは、ミーティングに

向かうため、一星が選んだワンピースを

椅子に掛けると、自室を後にした。

窓から日が射し込み、暖かくなった

ミーティングルームへと続く廊下を

ふわぁ、と小さな欠伸をて歩いていると

突然「いったいこの大会はどうなってやがる！これが世界大会なのかよ!?」灰崎のそんな怒号とも取れる第一声が、廊下を通して響き渡った。

その声音に一瞬肩を弾かせたAは

「灰崎くん……？」と独り言を呟くと

風に背中を押されるかのように小走りで

ミーティングルームの扉の前に立つと

息を整えるのを待たずして自動扉に手をかざした。

「あっ、Aちゃんおはよう！」

「おはようございます、つくしさん」

扉が開かれ、朝から緊迫とした不穏な

空気が流れるミーティングルームの中へと

足を踏み入れると、その状況には不釣り合いな

つくしの明るい声が掛けられた。

挨拶を返したAは、腕を組んで顔を

顰めている不機嫌オーラ全開の灰崎を

一瞥すると、入ってすぐの扉の左側に

立っていたタツヤに「何かあったの？」

そっと耳打ちをした。

「実は……一星のことで少し揉み合いになってて」
「…………そう」

内緒話をするように、Aの耳に唇を

近づけて口元に片手をあてがいながら視線を

灰崎たちに向けたまま小声でタツヤが事情を

説明すると、Aの目に悲しみの色があらわれた。

「ありがとう、基山く…………んっ!?」

タツヤに向き直り、お礼を言いかけたその時。

突然後ろから、がしっと肩を掴まれ

そのままタツヤから遠ざけられるように

強引に引かれたAは数歩後ろによろけて

頭にとん、と硬い何かがぶつかったのを感じた。

「遅せぇよ、ブス」

「ヒロト？」

あと近けぇ、と、頭上から親しみのある

バリトンボイスが降りかかり、Aが

顔を上げると紫がかったピンク色の

綺麗な形をしたヒロトと目が合った。

が、それはほんの一瞬で

すぐにずっしりとした重みが頭に伝わった。

「ヒロト…………重い」
「知らねー」
「知らねーじゃないでしょ？」

ちょうどいい高さなのか、人の頭に

顎を乗せて「んー」と甘えるように

もたれかかるヒロトに、眉を八の字にさせて

ため息をついていると隣(タツヤ)から視線を感じた。