星を超えた想いを16【オリオンの刻印】 (ページ20)

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メンダコページ20

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首筋から垣間見えた付けたばかりの

赤い花をなぞるように撫でると、少年は

壊れたままのスライダーの付け根に手を掛けて

エレメントを首元まで引っ張りあげる。

そして何事も無かったかのようにベッドから

降りると、少女の顔を覗き込むように

しゃがみこんで声をかけた。

「先輩、起きてくださいよ」

聞き慣れた低くもない高くもないその声が

頭の中で壊れた拡声器のように

わんわん響き、深い眠りについていた

少女は迷惑そうに眉間にシワをよせて

布団を頭まで被り、シャットアウトする。

「先輩、聞こえてますよね？無視するなんて酷いです。僕寂しいです、先輩、聞いてますか？先輩…………聞けよ」

とんとんとん、と最初は軽く揺すぶるように

控えめに叩かれていた掛け布団も

次第に弱から強へと変わり、ばしばしばしと

力強く容赦なく叩かれた。

「痛い……」
「起きないから痛くしてるんです」
「やだ……まだ、寝たい……」

いつもはシャンとしているAも

朝には弱いのか、舌足らずな口調で

いつもより幼い言動を零す。

毎朝子供を起こしに向かう母親のような

気持ちになった一星は片眉を

痙攣させながら少女を見下ろして

「本当にこいつ俺より歳上なのか？」

そう一瞬錯覚してしまった。

「いい加減起きてください」

少年がゆさゆさと身体を何度も揺さぶりながらそう言うと、やっと言葉が届いたのかAが、ひょっこりと布団から顔を半分だけ覗かせた。

「めん、だこ……うるさい」

恐らく焦点が合わなかったのだろう。

半開きになった目で一星の髪が

シルエットとして映り、Aは反射的に云った。

人がわざわざ起こしにきた(勝手にやってる)にも関わらず、目の前の女にやれうるさいだの、やれ眠たいだの、挙句の果てにはメンダコと言われる始末。

一星は大量の怒筋マークを頭の上に

浮かばせると、顔と口元を引き攣らせると

Aが被る布団を両手で掴んだ。

そして

「………誰がメンダコだこのバカ女！！」

敬語なんて使ってられるか。

怒り任せにばさっ、と勢いよく布団を

剥ぎ取ると、急に冷たい風がAを襲う。

ぶるりと体を震わせ、ぼんやりとした頭で「んー、んー」と唸りながら手探りで布団を探している。

「襲われても文句言うなよ」

低い声で耳元でそう囁けば、Aは

猫のように体を伸ばして、手の甲で

目をこすり、ブルブルッと顔を横に振ると

固く閉ざされていた瞼をゆっくりと開いた。