星を超えた想いを16【オリオンの刻印】 (ページ18)

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忍ぶページ18

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「お前バカだろ、告白されたわけでもねーのにそんな事で一々悩んでんのか？」

狐みたいに横目でそんな彼女を見ながら

「おめでたい頭だな」と皮肉を零すヒロト。

「さ、されたんだから仕方ないでしょ」

「されたって何が」

そ、れは……とヒロトを一瞥してから

また口篭り、ポッキーに視線を落としながら

Aはゆっくりと震える唇を開いた。

「………………"告白"」

「は？」

狐につままれたような顔で、ヒロトは

箱から摘んで取り出したポッキーを

ベンチの横をすり抜けて地面に落下させた。

そして、呆気にとられて目を見開かせていたヒロトは、すぐにその目をすっと萎めて顔を顰めさせる。

「………………マジかよ」

声のトーンを落としながらそう言うと

Aは頬を赤らめ、伏し目がちに肯定した。

「だからこうして悩んでるの。何回も抱きしめてきたり、恥ずかしげもなく手、繋いできたり………き、き、キス、もされかけたり…………」

両手を膝の上に置いて、見合いをする娘のように霜におかされかかった鬢(びん)の辺まで、初心らしく上気しながら、Aは熱の篭った瞳で話した。

「胸が苦しくて………痛、くて
灰崎くんとは違う胸の痛みっていうか……」

顔に恥じらいの色を溢れさせては

緩んで少し開いた唇が月明かりに照らされ

ヒロトにはそれが色っぽく見えてしまう。

「(なら、何でそんな嬉しそうな顔してんだよ)」

下唇を噛んで、心の奥底から沸き立つ

名前の知らない黒い感情に苛まれる。

だが、認めたくなくて気づかない"フリ"をした

ヒロトはその感情から逃げるように目を逸らす。

「お前らの惚気話なんて聞かねーぞ」
「そ、そんなんじゃないわよ！」
「へーへー」
「ほ、本当にそんなんじゃないから！」

片膝に肘をついて、掌に顎を乗せながら

羨望と嘲りの交じり合う不機嫌そうな声で

Aから、ふいっと顔を背けてそう言った。

話せば話すほど、聞けば聞くほど二人の間の

永遠に縮まらない距離が浮きぼりになる。

"喧嘩するほど仲がいい"

周りから何度も言われ続けたその言葉。

____だからなんだ？

普通よりちょっとだけ距離が近いだけで

所詮は平行線。なんの火花も散らなければ

なんの化学変化も二人の間には起こらない。

(A)
(なに？)

(月が…………綺麗だな)
(えっと…………雲に隠れてるけど)
(……………気づけよ、ブス)
(ヒロト？)

月が綺麗ですね…………その想いは伝わらない。