星を超えた想いを16【オリオンの刻印】 (ページ2)

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荷物検査ページ2

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「うっわ、たんこぶできてる………」

前髪を上げて、鏡に映る赤くなった自分の

額を見つめながらAは、げんなりとした

声で呟いた。

ロッカーに頭をぶつけて気持ちを

沈めようなんて奇行に走ったせいで

赤く腫れてしまったわけだが。

「今日の私、本当どうかしてる」

何度目かも分からない深い溜息をついて、最後に忘れ物がないか確認をして、ロッカーを閉めたAは更衣室の電気を消すと扉に手をかけて外に出る。

怪我をした手に負担を掛けないように

左肩にバッグを下げて、左手で更衣室の

扉を開けたAの目に飛び込んできたのは

サッカー管理局員の男だった。

「あの、どうかしたんですか？」
「キミは？」
「強化委員監視役の日暮Aです」

管理局員がスタジアムの、しかも更衣室の

周りをウロウロとしているのは余程の

ことがない限りおかしいわけで

Aが声をかけると管理局員の男は

少しだけ狼狽えて彼女を見下ろした。

「管理局員の方がこんなところで

何か問題でも起きたんですか？」

静かな廊下にAの声が響く。

不思議そうに小首を傾げて局員に訊ねると

答えたのは、意外な人物だった。

「荷物検査ですよ」
「一星くん？」

今まで局員の背に隠れて見えなかったが

確かに一星が局員の背中からひょっこりと

顔を出してそう答えた。

「彼から、野坂悠馬がドーピング剤を使っているとの話を聞いてね」

局員のその言葉に、Aは大きな瞳を
すっと細ませて睨むようにして口を開いた。

「野坂くんはそんなことしません」
「何故言いきれるんだい？」
「しないからしないって言ってるんです」

ぎゅっ、と肩から掛けたバッグの持ち手に力を入れて断言すると、一星の「その理屈最高です、先輩」という笑い声が聞こえた。

それに気分を害したAは「おかしいことなんて言ってないよ、一星くん」声を震わせてそう言った。

「分かったらそこを退いてもらおうか」
「嫌です」

通せんぼをするように、局員が右に

向かおうとすればすかさず右へ移動して

左に行こうとすればその行く手を阻むように立つ。

「行ってください」

「一星くん!?」

いつの間にか背後に回られていた一星に
手首を掴まれてしまったAは動くことが
できずに、管理局員を通してしまう。

「一星くん、邪魔しないで！」

「邪魔？先輩こそ俺の邪魔しないでください」

Aのその言葉に、一星は片眉を上げて

不快そうに顔を顰めさせた。