星を超えた想いを15【オリオンの刻印】 (ページ8)

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接近ページ8

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____好きなんだ____

背を向けて、駆け出して行った野坂の逞しい背中を見つめながら、Aは恍惚とした表情で西蔭と並んでフィールドを駆ける野坂の姿を見つめていた。耳も、頬も、顔にも熱が集まって目頭も熱くなった。

「……………………っ」

どくどくどく、と激しく鼓動し始める心臓。

高鳴る心音がA自身にも分かるくらい伝わった。

野坂のジャージは大きくて、体格が違うAの

体には不釣り合いなくらいぶかぶかだった。

だらん、とだしなく垂れた袖口からは

Aの手が出ることも無い。

「いきなりそんな事言われても……困る、」

野坂の気持ちに触れて、あんな真剣な瞳で

見つめられれば誰だってこうなってしまうだろう。

少し動くだけでも、ふわりと野坂の匂いが

鼻腔を擽って、Aは差恥から顔を俯かせる。

その時、顔を俯かせていたAの視界の端で

誰かのスパイクが姿を現した。

同時に、項垂れていたAの右手(袖口)が

そっ、と優しく捲られて、ちろり、と

Aの小指の先に何かが触れた。

びくっといきなりのことに肩をビクつかせて

右隣に並び立つその誰かを確かめるため顔を上げた

「一星くん？」

そこにいたのは一星だった。

ならば小指に触れているその手も、一星のものだ。

「あの……どうかしたの？」

そう問いかけても、一星はAの方を振り向かず、フィールドに視線をやったまま、左手でAの小指を絡ませることに集中していた。

「…………」

不思議に思って、Aは絡められた小指から逃れようと腕を引いたりしてみるが、一星は小指だけでは飽き足らず、今度は薬指まで絡ませてきた。

「ちょ、ちょっと、一星くん！」

袖口の中で絡み合う指先に神経が集中して

野坂くんのジャージでなんてことしてるの、と

罪悪感で呵責(かしゃく)が内心に尾を引き

Aは先程の野坂の言葉を思い返してしまう。

「一星くん返事して？試合始まるから、離して」
「………………」

不安気な瞳で一星を見上げても一星は何も言ってくれず、Aは絡まる指の熱を感じるしかなかった。

静かに、優しく、だけれど確かに……

交差するように一星はAの細い指先を重ねた。

小指、薬指、中指、人差し指、親指。

だんだんと深く絡められて、袖口の中で

恋人繋ぎのように手を絡めながら時折

感触を確かめるように握れば

一星の視界の端でAは頬を赤らめたまま

ぎゅっ、と固く目を瞑っていた。