冷酷無情 ページ42
❀
危機的状況下に立たされているのどちらなのか。
アナハンはどこで掛け違えたかわからない
この試合展開に、頭の中で試行錯誤を繰り返す。
「それに、先に仕掛けてきたのは君たちの方だ。
僕はそれを返したに過ぎない」
正当防衛って言葉知ってるかな？と
バカにしたように見下す野坂の態度に
アナハンは膝に置いていた手を震わせる。
「わざわざ審判と結託して
フィールド外にいた関係の無い彼女に
危害を加えた君たちの方こそ卑怯なんじゃない？」
一気に詰め寄るような勢いで言葉が飛び出す
野坂の波状攻撃はとどまることを知らない。
「スパイクで手を踏みつけたりもしたらしいね？赤くなって腫れてたよ…………かわいそうに」
妙に落着いた一字一字を彫りつけるような
口調で言った野坂だが、その声は周りが
ゾッとするほど低い、押し込もった声だった。
「君もその痛みを知れば少しでも彼女の気持ちがわかるかもね？言葉による教訓なんて、今は意味の無いものだと、そう思わないかい？」
そう言って、スパイクをチラつかせる野坂。
言葉には、有無を言わさぬ勢いがあり
喉元を短剣で突きつけられている気さえする。
冷酷無情な顔で野坂から見下ろされ、額から
落ちた汗が頬を伝って膝を濡らす。
「野坂」
ぽん、と野坂の肩に灰崎の手が乗せられた。
「冗談だよ」
振り返り、そう言った野坂の目は決して
冗談を言っているような目には見えなかった。
「お前の冗談は冗談に聞こえねえんだよ」
「半分本気だったからね」
そう言って、灰崎の手を払った野坂にため息をついた灰崎は「お前達は、こいつの怖さを知らないらしいな」アナハンたちに視線を投げると、忠告する。
「こいつはな
目的のためなら手段を選ばない冷酷な男だ」
「灰崎くん、それは聞き捨てならないな。知ってるはずだよ？僕は崇高な目的のために動いている」
親指で隣にいる野坂を指してそう言うが
あくまで利己的な発想だと主張してきた
野坂に、どの口が言うんだよ、という
意味を込めて目を伏せる灰崎。
「そういえば、君たちには言ってなかったね」
跪くアナハンの顔の前に、野坂が自らの
掌を向けると、アナハンは思わず息を呑む。
「"僕はこの手で、世界を変える"」
野坂の力強いその、声が、見えない矢のように
アナハンの胸の底に突き刺さる。
数秒後、決めゼリフ一緒じゃねぇか、と
灰崎からツッコミが入ることを
今の野坂は知る由もない………
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 323人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小雪
| 作成日時：2018年12月16日 18時
