星を超えた想いを15【オリオンの刻印】 (ページ36)

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反抗期少年ページ36

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びりべり、というテープの音を響かせて

手の甲を固定するようにキツめに縛られると

少し顔を歪めながら軽く手を動かす。

「応急処置は完了しました………ですが

念の為、病院で検査を受けた方がいいでしょう」

「そう、ですか………」

くれぐれも安静に、と付け足した

救護班リーダーはテーピングを救急箱に

しまうと、Aに頭を下げて立ち去っていく。

ぴーっ！という試合再開のホイッスルの音を聞きながら、Aはできるだけ腫れを抑えるために、手の甲を心臓より上に挙げたまま安静を保つ。

「先輩」

試合を眺めていると、不意に誰かが

フィールドの白線内からAの前に

立ち止まり、同時に名前を呼んだ。

「一星くん？」

座っていたため、足しか見えなかった

Aが顔をゆっくりと上げると

太陽を後ろに青髪の少年がその場に佇んでいた。

「…………あの」

一星にしては珍しく、目を泳がせながら

おどおどとしていた。

「どうしたの？試合、戻らなくていいの？」

「そう、なんですけど」

いつもと様子がおかしい一星に心配そうに

下から顔を覗き込んでいると、一瞬目が合うも

すぐに逸らされてしまう……が、チラチラと

Aの手の甲に視線を送っていた。

「…………手、大丈夫ですか？」
「えっ…………ああ、うん」
「そう、ですか」

まさかそんなことを聞かれると思わなかった

Aはきょとんとした表情で目を瞬かせる。

「もしかして心配してくれてる？」
「悪いですか」
「え、いやそういうんじゃない、けど」
「なら聞かないでください、うざいんで」

そんなことを言われたのが心外だったのか
一星は不快そうに太い眉を寄せて
膨れっ面でAを見下ろしていた。

「一星くん、そろそろ戻らないと」

「言われなくても戻ります、うるさい人ですね」

「(なんか、反抗期の子供みたい)」

ふいっと顔を逸らしてAに背中を向ける一星。ころころと変わる表情に、強く当たられたり優しくされたりと、最近一星の考えていることが読めないAはそんな的外れなことを考えていた。

「先輩」
「なに？」

今度はなんだろう、と変わらず

一星の背に視線を送っていると

一星の手が少しだけ震えていた。

「…………すみませんでした」

最後にそれだけを言い残すと一星は

試合の中へと駆け出していく。

それが一体、何を意味して何に対しての

謝罪だったのか、理由を知らないAは

その意味を知る由もなかった……