星を超えた想いを15【オリオンの刻印】 (ページ34)

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忿怒ページ34

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視線を合わせるように屈んだ野坂に、気を取られたAは顔を横に傾ける。野坂は腰を下ろすと、片膝の上に右腕を乗せながら怪我のしていないAの左手を優しく手に取り、包み込むように触れた。

「あの時、いったい何が起きた」

か細いAの手の温もりを感じながら

俯き加減にいつもより何トーンも低い声で

その時、いったい何が起きたのか説明を求めた。

「審判に背中を押されたの」

そして、Aは野坂から視線を少し逸らして

伏し目がちに状況をその場にいる皆に語り始める。

「押された!?」
「やはり、審判もグルだったのか」
「そんなこったろうと思ったぜ……」

目をぱちぱちと瞬かせて審判を見る明日人。

そして風丸もまた、顎に手を当てながら
眉間にシワを寄せて深刻な表情を見せた。

灰崎もまた、薄々審判に疑念を抱いていたため

それがAの発言により黒だと分かると

よりいっそう目を細め、眼光を光らせた。

「そしたら、急に目が眩んで

気づいた時にはアナハンが私の手を狙って……」

「目が眩んだ？」と野坂が訝しげな顔で聞くと「恐らくスパイクに鏡を仕込んでいたんだろう、今までの手の内を見ればありえない話じゃない」Aの代わりに風丸が説明した。

「随分手の込んだことしてくれるじゃねぇか」

へぇ、と言いながら頭の後ろで手を組んで

額に青筋を立てるヒロト。

「あの野郎………」

灰崎は目尻を激しく吊り上げると

Aの様子を嘲笑うかのように

眺めているアナハンたちを睨みつけながら

掴みかかる勢いで彼らの元へと大股で

歩いていこうとしたが「待て灰崎」風丸の

声と共に、肩に手を置かれて制止されてしまう。

「邪魔すんじゃねぇよ！」
「落ち着け灰崎！一先ず日暮は無事だったんだ」
「ああ!?」

肩に置かれた手を乱暴に片手で払った

灰崎は、体ごと勢いよく風丸に

振り返ると獣のようにギラつかせた目を光らせる。

「こいつの今の状況を見て、どこが無事だなんて言えんだよ!?骨が折れてるかもしれねぇんだぞ！」

そう言いながら、今も救護班から応急処置を受けるAを指差ししながら灰崎は息を荒らげて云う。

「ここで俺達が騒いでいても仕方ないだろ
お前の気持ちも分かる……だが、今は」

頭を冷やせ、と風丸が刺激をしないように

あくまで冷静な口調で宥めると灰崎は

ぎりっと歯を食いしばるとAを一瞥して

怒りの行き場のない気持ちを

フィールドを蹴りあげることで晴らした。